料理をするときに包丁を使うことはあっても、自分の手でメンテナンスをしたことがある方は少ないのではないでしょうか。
今回は、老舗の包丁専門店「堺一文字光秀」にて、和包丁を使った包丁研ぎにチャレンジ! “研ぎ”に向き合う時間は、包丁がきれいになるだけではなく、気持ちにも変化をもたらしてくれました。
賑わいあふれる商店街にある老舗包丁専門店で、研ぎ体験にチャレンジ
大阪・なんばにある道具屋筋商店街。天下の台所・大阪の食を支える、料理道具専門店が並び、料理人や観光客で毎日のように賑わっています。
この商店街を南側から入って少し歩いたところに、「堺一文字光秀」は店舗を構えています。
店先には包丁のモニュメントがあり、入口正面には日本刀が展示されています。
創業は1953年。
日本でも有数の刃物の産地、堺の包丁を広めるために、この地で開業して70年以上になります。
店内には、万能包丁から出刃包丁、柳刃包丁など一般的によく知られる包丁のほか、ふぐ引き包丁といった食材ごとに作られたもの、そして鱧の処理に使う骨切り包丁など、たくさんの包丁が並びます。その様子は壮観で、眺めているだけでもあっという間に時間が過ぎてしまいます。
こちらの店内中央の螺旋階段を上がると、2階に広がるのが、「一十一ICHITOI」というギャラリースペースです。一十一ICHITOIという名前には、屋号の「一文字」と、「十一(分野)の人々」が交わり、食のあらゆる「問い」を深めていくという意味が込められているそう。
2024年に開かれたこの場所では、「人と食文化が交差する場所」として、料理や道具の扱い、食文化をテーマとする体験型ワークショップのほか、さまざまなイベントが開催されています。
中でも人気なのが包丁の「研ぎ講座」です。
オープン当初から始まったこちらの講座では、専門の研ぎ師の方から包丁研ぎを教えてもらえるとあって、予約もすぐ埋まってしまうのだとか。
今回はその人気講座を体験! 包丁研ぎをマンツーマンで教えていただけることになりました。
実際に包丁を持ち、砥石に向き合う。一心に研ぐ時間はとにかく心地よい
包丁研ぎを教えてくださるのは、技術広報の松村誠也さんです。『上手に研いで切れ味が良くなった包丁で食材を切るのは気持ちいいですよ! 玉ねぎの薄切りもスライサーより薄くなります』とのこと。期待が膨らみます。
最初に包丁の構造や、包丁を研ぐ砥石の種類、手順について解説を聞きます。
ちなみに、包丁には和包丁と洋包丁があります。和包丁は刃の片側だけに角度がついている「片刃」で、洋包丁は刃の両方に角度がついている「両刃」です。今回研ぐ出刃包丁は、和包丁の一つです。
まずは包丁の状態をチェック。刃線(包丁の刃先に沿った切れる部分)に、欠けはないか、しのぎ筋(刃の側面にある面の境目)が崩れていないか、全体的に歪んでいないかなどを確認します。
いよいよ研ぎをスタート!
足を肩幅に広げ、背筋を軽く伸ばして研ぎ場に立ちます。刃がついている面を下にして、右手で包丁の柄をつかみます。右手の親指は刃の根元付近に当てます。
水を含ませた砥石に、刃をピタッと当てるようにして少し内側に圧力をかける、左手の人差し指と中指で押さえます。このスタイルで、包丁を前後させるのが研ぎの基本の動きです。
使う砥石は、刃こぼれや刃の形状を直したり、刃の厚みを抜くための「荒砥石」、
研ぎの標準となる「中砥石」、切れ味を最後に整える「仕上げ砥石」の3種類。
まずは中砥石を使って、砥石に対して45度の角度で包丁を置き、さらに刃を45度起こして刃先だけを研ぎ、刃線を修正します。
次に荒砥石で、刃線修正で現れた小さな二段刃(ごくわずかな段差)を研いで薄く整えます。
シュシュッ、ガリガリッという感触にドキドキしながら…。
そして、中砥石で切刃を研いで荒砥石の傷を薄めて滑らかに整えます。
包丁をシューッと動かす時は、緊張しますが心地良い瞬間です。
没頭している間は、ほかのことをすべて忘れられます。
仕上げ砥石を使って、刃先の二段刃が薄くなるまでシュッシュッと研ぎ上げます。
最後に、刃先を45度立たせて軽く研いで、裏側を数回軽く研いだら、
刃先を新聞紙で撫でて、刃先に残った金属のカスを除去すれば終了です。
新聞紙を試し切りして、スムーズに切れたら、研ぎは成功です。
研ぎに向き合う時間は癒し。道具を大切にすることは生活を豊かにしてくれる
技術広報として、包丁に毎日向き合っている松村さんに、お話を伺いました。
― 包丁研ぎ講座を開催するきっかけは?
長年にわたって、包丁に携わってきた企業として、包丁の正しい使い方とメンテナンスを伝えなくてはという思いから始まりました。
― 包丁研ぎ体験をされたお客様から、どんな声が寄せられますか?
「今まで思っていた研ぎ方と全然違っていた」とか、よ「うやくちゃんと切れるようになった」といったお声をいただきますね。正しく研ぐと本来の切れ味が戻って、いつもの料理もおいしくなります。焼いたお肉も、潰れずにスッと切れて肉汁が逃げず、ジューシーさをより楽しめます。
1回の体験でも研ぎを習得することはできますが、包丁研ぎは奥が深いので、たまに研いだ包丁を持って店に来てもらいたいですね。
― 日々、包丁に向き合ってどんなことを感じていますか?
やはり、研いでいる時が一番気持ちが落ち着いて、癒されます。
同じ動きを繰り返すのが気持ちがいいんですよ。『研ぎは瞑想』と言われる方もいますね。
会社や日常生活で、人間関係に疲れたり、気持ちが高ぶったりしたときも、包丁研ぎはおすすめです。
悩み事があっても、研ぐことに没頭すれば、きっと切り替えられると思います。
―研ぎ師として、みなさんに伝えたいことは?
包丁を、親から子へ、子から孫へと、受け継いで使っておられる方は意外と多くいらっしゃいます。受け継いだ包丁と、当店の50年前の無料包丁研ぎ券を持って、来られる方もいるんですよ。
包丁はきちんとメンテナンスすれば、それだけ長く使えます。良い包丁を手入れして使い続けることは自分の資産になるだけではなく、自分もともに成長している感覚を味わえると思います。
包丁に限らず、道具を手入れして使うことは、生活を豊かにしてくれます。
その一歩として、マイ包丁を持っていただけたらと思いますね。
初めての包丁研ぎを前にドキドキしましたが、研ぐときに触れる包丁のひんやり感、砥石の上を滑る時の感触と研ぎ音が、なんとも心地よかったです。
集中して向き合う時間が、包丁を美しくしてくれるだけでなく、丁寧に暮らす心地良さを教えてくれました。ぜひ一度、体験してみてください!
講座は、「はじめての研ぎ講座」「しっかり学ぶ研ぎ講座」「マンツーマン研ぎ講座」など、数種類あります。自分に合う講座を選んでお申し込みください。
講座はこちらから
堺一文字光秀
https://www.ichimonji.co.jp/
所在地:〒542-0075 大阪府大阪市中央区難波千日前14−8
営業時間:平日9:30〜18:30、土日祝10:30〜18:30
電話番号:06-6633-9393
一十一ICHITOI
https://www.ichimonji.co.jp/pages/ichitoi