1年に一度、お祭りの日に食べるクレープが何より楽しみだった小学生時代。転校が嫌で仕方なかったときも、「仙台に行けばクレープが食べられる」と思うことで、少し前向きになれた――。そんな大のクレープ好きが高じて、自分のお店を開いたのが「クレープえんどう」の遠藤さんです。
2023年に大阪・寺田町に1号店をオープンしてから店舗を広げ、現在はシンガポールにも進出。クレープへの思いや、姉妹・スタッフと一緒につくる店について、遠藤さんにお話を伺いました。
転校で落ち込んでいた自分を元気にしてくれたクレープ
――クレープが好きになったのは、いつごろからですか?
小学生のころから、ずっとクレープが好きなんです。
私は宮城県石巻市の出身なのですが、当時、地元にはクレープ屋さんがなくて。1年に1度、お祭りのときに食べるクレープをすごく楽しみにしていました。
中学生のときに仙台へ引っ越したら、駅前にクレープ屋さんがたくさんあったんです。それが嬉しくて、「高校生になったら絶対にクレープ屋さんでアルバイトしよう」と決めていました。
――クレープに元気をもらったこともあったそうですね。
仙台へは転校する形で引っ越したのですが、私は石巻を離れるのが嫌だったんです。
でも、「仙台に来れば、大好きなクレープを日常的に楽しめる」と思うと、少し元気になれました。クレープを楽しみにすることで、気持ちを前向きにしていたんだと思います。
お店を始めた当初は、ただただクレープが好きで、「自分でもおいしいクレープを作れるようになりたい」という思いでしたが、結果的には、自分がクレープに元気をもらったように、今度は自分の作るクレープで、みんなを笑顔にできたらいいなと思うようになりました。
宮城の「ずんだ」を使ったクレープが一番人気のメニューに
――ずんだを使ったクレープがあるのは、宮城県出身だからなんですね。ずんだと生クリームがこんなに合うことにも驚きました。
ずんだを生クリームで包んだ宮城銘菓を「喜久水庵」というお店が出していて、それを食べたときから、「ずんだは何にでも合うな」と思っていたんです。
でも、ずんだを使ったクレープには出会ったことがなくて。それならやってみようと作ったところ、今ではクレープえんどうの名物になりました。
――お客様の層も幅広いそうですね。
クレープ屋さんというと、かわいい雰囲気のお店が多いと思うのですが、うちはそういう感じではないので、男性1人でも気軽に来てくださる方が比較的多いですね。
近所の方が家族へのお土産を買いに来てくださることもありますし、ずんだの商品を選んでくださる方も多いです。小学生からおじいちゃん、おばあちゃんまで、常連さんの年齢層も本当に幅広いんですよ。
「誰でも来やすい、地域に愛されるクレープ屋さんにしたい」と思ってやってきたので、それが今のお客様の広がりにつながっているのかなと思います。
新作を考えるのも、もともと「常連さん」だったスタッフたち
――現在直営店は3店舗あるということですが、2か月に1度、店舗ごとに異なる新作クレープを販売されているそうですね。
はい。2026年の夏はレモンやマンゴー、ライムなどのクレープを販売しました。これからの秋の季節は、さつまいものクレープを販売予定です。
最初は私が新作メニューを考えていましたが、今は各店舗の店長がアイデアを出して、最終的に私が決めるという方法をとっています。
――スタッフの中には、もともとお客様だった方も多いとか。
そうなんです。スタッフは現在、25人ほどいるのですが、その半分くらいはもともと常連さんでした。社員は10人いて、私たち3姉妹と他の7名。その7人も、ほとんどが常連さんでした。
――3姉妹でやっているのですか?!
もともとは私1人で始めました。1号店、2号店をオープンするときに、当時はまだ学生だった妹に、何日か手伝ってもらったことはありました。
妹が留学を終えて帰国。
2号店が忙しくなってきた頃に「正社員として手伝ってほしい」とお願いしたんです。
3号店ができると、人件費などの計算も大変になってきて、
今度は姉に相談し、経理をお願いするようになりました。
2人とも、宮城から引っ越して来てくれたんです。
大人になっても3姉妹で一緒にいられる
――3姉妹がそろって大阪に来られたのですね。ご両親はどんな反応でしたか?
最初は寂しかったと思います。
でも、3姉妹が仲良くしている姿を見て、今はうれしく思っているかもしれません。
宮城や東京で催事があるときにも3姉妹で行きますし、2026年7月には、仙台市がタイ・バンコクで主催したタイの「東北フェア」にも3人で行ってきました。
この年齢になると、3姉妹で一緒に行動する機会はなかなかないと思うんです。でも同じ仕事をしていることで、一緒にいられる時間が自然と増えました。
もちろんスタッフもたくさんいるので、「3姉妹」が前面に出ることはないんですけれども。
「クレープ好き」が集まってできたチーム
――3店舗はそれぞれいつ頃オープンしたのですか?
1号店ができたのは2023年の6月。その後、2024年8月に阿倍野に2号店をオープンし、2025年9月には3号店へと店舗を広げました。2025年6月にはシンガポールにもお店を出しました。
――2023年から3年間で、ものすごい飛躍ですね。店舗が増えても、ご自身が店頭に立ち続けられるのには理由があるのでしょうか。
一番は、私自身がクレープを作ることが好きだからです。自分が知っているお客様の顔も見たいですし。
店舗が一気に増えていますが、創業してまだ3年です。「クレープえんどう」というブランドがぶれないようにするには、自分が現場に立って、その姿を見せることが大切だと思っています。
――日々、各店舗に足を運んでいるのですか?
基本的には寺田町の本店に立っています。
シンガポールには2~3か月に一度行って、お店を確認しています。
2号店は2年目に入り、自分がいなくてもしっかりお店が回っていると感じられているため、スタッフに任せているんです。3店舗目はやっと1年が経ち、私が知らない常連様もお越しくださっているようで、もうそろそろ私が行かなくても大丈夫かなと思い始めているところです。
本店はやっぱり1番でなければいけないと思っているので、私は本店に立つことが多いですね。
――仕事を人に任せることは、難しくないですか?
もっと速いペースで店舗を増やしていたら、難しかったかもしれません。でもうちは1年に1店舗くらいのペースですし、何よりスタッフが本当にクレープ好きなんです。
「クレープえんどう」が好きで働いてくれている人たちなので、お客様に対して思いやりのない態度をとることはないですし、自分自身が常連客だったからこそ、「今度は自分がお客様を喜ばせたい」と思ってくれている人が多いのかもしれません。
食べ歩きは北海道から九州まで。「好き」を仕事にするために
――お店を始めるまでに、かなりたくさんのクレープを食べ歩いたそうですね。
北海道から九州まで、旅行に行けばクレープを食べていました。
最初は単純に「いろいろなクレープを食べたい」という気持ちだったんです。でも、大学生のときにクレープ屋さんでアルバイトをし、「いつか独立しよう」と決めてからは目的が変わりました。
まだ自分には成長が必要だから、まずはクレープ屋さんに就職して修行をし、それから独立しようと。そのころは、働いて学ぶお店を探すために、クレープを食べ歩いていました。
――2023年の1号店オープンから数年で、海外にも進出されましたよね。
もともと、いつか海外でもクレープを提供してみたいと思っていたところ、「UMACHA(うまちゃ)」というドリンクのお店とコラボでシンガポールに出店するお話をいただきました。
シンガポールにはいろいろな国の人が暮らしています。そこでクレープを販売したら、日本では聞けない世界中の人の感想を聞けるんじゃないかなと考えました。
「UMACHA」オーナーのお話を伺っていると、仕事に対する思いや理念に共通点も多く、この方と一緒に挑戦してみたいと思い、決心したんです。
――海外でお店を展開してみて、感じたことはありますか?
日本では当たり前だと思っていた「ありがとうございました」という声かけ1つとっても、シンガポールでは接客スタイルに違いがあると感じました。
だからこそ、日本のブランドとして、日本ならではのおもてなしを大切にしたいなと思っています。
ずんだが抹茶みたいになったらうれしい!
――お話を伺っていると、宮城への思いも感じられます。
そうですね。宮城を出た立場だからこそ、食材に宮城のものを使って多くの人に宮城のおいしいものを味わってほしいと思っています。
特に「ずんだ」は、もっとたくさんの人に知ってもらえればと思っています。ずんだが「抹茶」みたいになったらうれしいですね。「MATCHA」は海外でも人気。それと同じように「ずんだ」を好きになってもらい、宮城のことも知っていただけたなら、それは私にとって大変幸せなことです。
――お土産やテイクアウトの商品も考えておられるとか。
「えんどうの贈りもの」という名前で、焼き菓子などを販売できるように準備を進めています。パッケージなどもできつつあるんですよ!
クレープは基本的に、作りたてをその日のうちに楽しんでもらうものです。遠方から来てくださる方も多いので、クレープを食べるだけでなく、クッキーなどの焼き菓子をお土産として持ち帰っていただけたら、もっと「クレープえんどう」を楽しんでもらえるんじゃないかなと思っています。
全国の催事にも、3か月に1度くらい出展しています。催事はお客様に知っていただく機会になるだけでなく、スタッフにとっても、普段とは違うお客様に会い、新しい経験ができるので、いい刺激になると思っています。
クレープえんどう
◆Instagram
◆催事
9月16日~23日:ながの東急百貨店
2026年8月玉造、11月タイに出店予定
取材を終えて
遠藤さんの話を伺っていると、「クレープが好き」というシンプルな気持ちが、人生のいろいろな場面を動かしてきたように思います。
遠藤さんの「クレープが好き」という純粋な気持ちが、クレープを通してスタッフやお客様へと広がり、今度は誰かを笑顔にしている。そんな幸せの輪が、「クレープえんどう」に生まれているような気がしました。
クレープえんどうのおいしいクレープを頬張りながら、大切な誰かと幸せをわかちあいたいものですね!
番組「ウェルチル 私と誰かに、ちょっといいこと」
関西テレビ放送
毎週金曜よる10時52分放送(関西ローカル)
次回もお楽しみに。