切なく儚い青春の物語『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』オンライン試写レビュー【第8回ウェルチル女子が行く】

ウェルチル女子が行く

映画

西にウェルビーイングに役立つものあらば体験し、東にウェルビーイングなイベントがあれば参加する…そんなウェルチル編集部の女子部員、通称”ウェルチル女子”が東奔西走し、注目のモノ・コトの等身大の感想をお届けする「ウェルチル女子が行く」シリーズ。

今回は鈴木おさむ原作・脚本『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』の試写会レビュー！
「もしも人生で一回だけ魔法が使えるとしたら」……4人の少年たちはいったいどんな夢を叶えるのでしょうか？

「僕らは人生で一回だけ魔法が使える」ストーリー

舞台は東京からそう遠くない場所にある緑豊かな小さな村。この村の少年たちは18歳になると「人生で一回だけ魔法を使える」という秘密があります。18歳の誕生日を迎えるアキト（八木勇征）、ハルヒ（井上祐貴）、ナツキ（櫻井海音）、ユキオ（椿泰我）の4人は最初こそ信じられず笑い飛ばしますが、父親たちもかつて魔法を使ったことを知り、それぞれの願いと向き合い始めます。

魔法を使えるのは18歳から20歳の間に1度だけ。さらに、人の命に関わることには魔法は使えないという条件があります。「不老不死」や「死んだ人を生き返らせる」などには使えないのです。もしもルールを破ったら、村に不幸が訪れるのだそう。

進路、恋、夢、健康…
人生の大事な選択の前で、4人は「たった一回の魔法」を何に使うのか葛藤します。

自分のために使うか、誰かのために使うか…葛藤がリアル

アニストを目指すアキトは「音大合格」を夢見ています。でも魔法の力ではなく「自分の努力で夢を叶えたい！」と考えます。
そんなアキトに、ナツキは反発。ナツキは父親が病気で働けなくなり、サッカーの夢をあきらめていたのでした。人の命に関わることには魔法は使えませんが、ナツキはルールを破ってでも、父親の病気を治して自分の夢を追いかけたいと考えます。

18歳という多感な時期に、家庭の事情で夢をあきらめなければならないナツキが、たとえ誰かが不幸になっても自分の夢を叶えたいと欲望を抱くのは自然のこと。むしろナツキの葛藤はとても人間らしくリアリティがあります。

ユキオもまた、父親がダム建設に関わったことで村に対して負い目を感じていました。「ダムをぶっ壊したい」と本音をこぼしますが、もしそんなことに魔法を使えば村に大きな被害が出るのは明らかです。

気になるのはハルヒの心情です。ハルヒは生まれたときから体が弱く、他の３人と同じように思いっきり走り回ることができません。魔法で病気を治したいと思うのは当然のこと。でも、「命に関わることには魔法は使えない」――そんなハルヒが選んだのは、「誰かを幸せにするために魔法を使う」という道でした。
ナツキがまっすぐに欲望をぶつけても、ハルヒは揺るがず、彼の言葉には強さがありました。

4人が本音でぶつかり合うシーンはとてもリアルで「最終的にどんな選択をするんだろう？」と、序盤からもう目が離せなくなります！

「もしも魔法が使えたら…？」このテーマが深い！

映画を観ている間「私なら魔法をどう使う？」と、つい自分に置き換えて考えてしまいます。ウェルチル女子としては「何に魔法を使うか」よりも「どう生きるか」の問いなのかも、と感じました。
例えば、ナツキは「魔法で父親の病気を治したい」と強く願います。でも、それはルール違反になってしまう……。
それでも、自分の夢を叶えるためには手段を選ばないと思う気持ちは、誰しもが持つ感情ですよね。

一方で、ハルヒは「自分のためではなく、人のために魔法を使いたい」と決断します。この対比がすごくリアルで、考えさせられるポイントでした。

ウェルチル女子的には「自分を大切にしながら、誰かの幸せにもつながる選択」が理想のウェルビーイング。
ハルヒの決断は、自己犠牲ではなく真の優しさを感じました。

壁にぶつかったときにどうする？

人生で壁にぶつかったとき、もし魔法があれば簡単に乗り越えられるかもしれません。でも、4人の少年たちは最終的に、自分の苦しみから逃れるための「近道」として魔法を使うことを選びませんでした。

今、何か困難を抱えている人やつらい状況にある人にこの映画を見てほしいと思います。この作品は「もしも魔法が使えたら」というテーマを通して、本当の幸せとは何なのか。時間をかけて選んだ道は、きっと自分にとって意味のあるものになるということを教えてくれます。