大相撲といえば国技館、力士の迫力ある取組、そして「ハッキヨイ!」の掛け声。興味はあるけれど、「なんだか難しそう…」「力士さんたちの見分けがつかない…」などと思っていませんか?
実は、相撲の魅力は迫力ある取組だけではありません。相撲愛にあふれるスー女、山根千佳さんがグルメやイベント、力士の人柄など、初心者の方にもわかりやすく大相撲の魅力を語ります。第4回は人気力士・宇良関の魅力や、今場所注目の力士についてお聞きしました。
山根千佳:
1995年12月12日、鳥取県出身。2012年、「ホリプロタレントスカウトキャラバン」ファイナリストに進出。翌2013年、芸能界デビュー。相撲好きなことからその知識を生かした大相撲関連の番組などでも活躍。2024年には自身初となる著書、『山根千佳の大相撲の歩き方』(マイクロマガジン社)を出版している。
宇良関はどうしてこんなに人気?
前回の塩撒きの際にも触れましたが、宇良関は本当に人気がありますね。レスリング経験者という経歴を生かしたトリッキーな動きや、何十年に一度しか出ないような珍しい決まり手など、観客が虜になる要因がたくさんあります。
相撲の決まり手には、寄り切りや押し出しなど定番というものがいくつかあるのですが、宇良関が繰り出す居反りや伝え反りといった珍しい決まり手はやはり見ていて面白い。会場が湧きますよね。土俵際まで攻め込まれても諦めないその姿勢が、魅力的です。
宇良関は一度大けがをして番付を大きく下げたことがあり、どん底を身をもって味わっている力士なんですね。そこから復活してきているという姿も、胸が熱くなってしまいますね。もう二度と怪我をしてほしくないとファンはみんな願っていると思います。
あとは、なんといっても宇良関本人のキャラクターですよね。とっても個性的というか…取り組み後のインタビューなどでも、「今日はどうでしたか?」と聞かれて、「ちょっと覚えていないです」と答えてみたり。インタビューの内容もよく話題になっているイメージですね。
ただそれは、やはり作戦で、対戦相手に手の内を知られたくないからあまり話さないのではないでしょうか。絶対に手の内を明かさないぞという、その意思が感じられるところが面白いです。
可愛らしい顔立ちやピンクのまわし、お茶目でどこか不思議なキャラクター、そして多彩な決まり手、宇良関はなるべくして人気力士になっていると思います。
ウクライナ出身、角界の貴公子の魅力
推しという点でも、注目という点でも、9月場所は安青錦関抜きには語ることができないでしょう。ウクライナ出身で、ロシアとの戦時中の2022年4月に日本に来られたので、まだ角界に入って、3年しか経っていません。ウクライナ出身者で初三役、そして初土俵から所要12場所での新三役昇進は、1958年以降で最速のスピード出世力士なんですよ。
また、琴欧州関や栃ノ心関などをはじめとした外国出身の力士はパワー系の方が多い傾向にあります。それは体が大きい方が多いからですね。ですが、安青錦関は他の外国力士に比べたときに、体が大きい方ではありません。彼は、レスリング経験があることもあり、技巧派の力士なんです。
何よりすごい点は、低重心で前傾姿勢が決して崩れないこと。落ちそうで落ちないギリギリの低さを攻めつつ、その低さから内無双などの意外性のある技を繰り広げてくる。相手はついついそちらに意識が向いてしまいますよね。そういった駆け引きもすごくうまい力士です。
彼の相撲スタイルは、師匠である元関脇の安美錦関(現・安治川親方)によく似ています。親方の教えをすごく忠実に守っているのだろうなという印象を受けます。安美錦関も長く活躍した力士なので、昔からの相撲ファンの方々も、そういう点で見ていて感慨深いものがあると思います。小結にとどまらず、もっともっと上の番付を狙っていくことのできる期待の星ですね。
取材・執筆/和田愛理