おいしいお酒をたしなむ時間は人類の幸福、まさにウェルビーイングな瞬間です。しかし近年は、若者の酒離れやコロナ禍による外食産業への打撃など、お酒を取り巻く社会状況も変化しています。お酒を飲む人とつくる人両方に豊かな未来を迎えてもらおうと、鹿児島県で芋焼酎の新たな価値を広める商品企画や開発に取り組む、LINK SPIRITS株式会社の代表・冨永咲さんに詳しくお話を伺いました。
若い世代の人たちにも芋焼酎の魅力を知ってほしい
LINK SPIRITS株式会社 代表・冨永咲さん
――LINK SPIRITS株式会社を立ち上げた経緯を教えてください。
焼酎をまだ飲んだことがない人たちに、焼酎を飲むきっかけをつくりたくてLINK SPIRITSを立ち上げました。焼酎の企画や開発から販売までをプロデュースすることが私たちの役割です。焼酎を作る人たちと飲む人たちをLINK SPIRITSがつなげ、新しい市場を開拓することで焼酎文化全体の価値を上げていきたいと考えています。
私自身が鹿児島の焼酎蔵の人たちとつながるきっかけになったのは、2016年に「2代目ミス薩摩焼酎」に選ばれたこと。鹿児島県で生産される焼酎のPR活動をする中で焼酎蔵の人たちとお話しする機会が増え、焼酎の奥深い魅力を知りました。ところが近年では、若者の酒離れや原料の芋に蔓延する病気など、酒造りの担い手にとって厳しい時代が来ています。
若い世代の方たちにも興味をもってもらえるような焼酎を開発して届けていくことで焼酎市場を盛り上げ、焼酎を生産する作り手も飲み手も豊かにすることが私たちの目的です。
鮮やかなピンク色の焼酎「NANAIRO -七色-」が看板商品
――どのような芋焼酎を開発していますか?
現在販売しているのは3つの銘柄の芋焼酎です。鹿児島県志布志市の若潮酒造株式会社と協力して開発した「NANAIRO -七色-」は、ロゼワイン酵母で仕込んだ原酒を紫芋の天然色素でピンクに色付けした芋焼酎。LINK SPIRITSを代表する看板商品です。「コナイシン」という珍しい品種のサツマイモを原料に使っていて、この芋は繊維質でとても硬いため仕込みに通常の3倍の手間がかかっています。ロゼワイン酵母が花のような香りとフルーティな味わいを引き出し、芋焼酎初心者でも飲みやすいお酒に仕上がっています。
「音環-OTOWA-」は2025年2月22日に発売したばかりの新商品。若潮酒造株式会社とサツマイモ農家の春成農園株式会社、日本に一人しかいない木樽蒸留器の職人・津留安郎さんと協力して造りました。原料のサツマイモは「紅はるか」という品種で、昔ながらのかめ壺で仕込み、木の樽を使った蒸留器で仕上げています。紅はるか特有の甘みと木樽蒸留のまろやかさが融合した極上の味わいが楽しめる焼酎です。一般的に焼酎はステンレスのタンクを使って蒸留されますが、杉の木を使った樽で蒸留すると杉のほのかな香りもして、上品でまろやかな味に仕上がります。木樽蒸留器をつくれる職人さんは日本に1人しかおらず、九州を中心に約200ある焼酎蔵のうち、鹿児島の14蔵でしか扱っていない貴重なもの。伝統的な酒造りの文化を未来に残したいという思いで企画しました。
「GEM SPIRITS(ジェムスピリッツ)」は、鹿児島の老舗蔵に眠る「秘蔵の熟成焼酎」をセットにした商品です。大石酒造、大山甚七商店、小正醸造の3つの焼酎蔵で10年以上も貯蔵されていた熟成酒を、宝石をイメージしてデザインした瓶に詰めました。「NANAIRO -七色-」や「音環-OTOWA-」は焼酎初心者さん向けて企画したお酒ですが、「GEM SPIRITS(ジェムスピリッツ)」はウイスキーや焼酎を飲みなれた通な人に届けたくて企画した商品。蔵に眠るダイヤの原石のような貴重な原酒を宝石に見立て、それを掘り起こして世の中に届けるというコンセプトです。
焼酎初心者さんには「炭酸割り」がおすすめ
――焼酎初心者さんにおすすめの飲み方を教えてください。
焼酎を炭酸水でお好みの濃さに割る「炭酸割り」がおすすめです。甘みがほしいという人にはコーラ割りも良いと思います。焼酎の味わいによって組み合わせる割り材を変えるのも楽しいですよ。例えば、「NANAIRO -七色-」はトニックウォーターとの相性も抜群で、カクテルのような「トニック割り」もおいしいです。自分好みの濃さや割り材を探してみるのも面白いと思います。
世界にも焼酎の魅力を広げていきたい
――ピッチコンテスト「NEXT FOUNDERS」でファイナリストに選出されたそうですね。
「NEXT FOUNDERS」はSHE 株式会社とポーラ・オルビスホールディングスが、次世代の女性起業家を輩出するために協業で立ち上げたピッチコンテストです。約160件のエントリーから審査を経て、ファイナリストの一人として選出されました。ピッチコンテストは起業家が自社のアイディアや商品をプレゼンして、投資家や審査員が評価するイベントです。LINK SPIRITSが企画開発を行った焼酎を鹿児島以外でアピールできる貴重な機会にもなり、投資家目線でのフィードバックももらえて勉強にもなりました。
あまり知られていませんが、鹿児島で芋焼酎が作られ始めたのは今から約150年前の明治維新の時代。当時の芋焼酎は飲むためのものではなく工業用のアルコールでした。欧米諸国に負けない強い国をつくる富国強兵政策を進めるために、機械を動かす燃料としてサツマイモからアルコールを作り始めたことが鹿児島の芋焼酎文化のルーツなんです。その後、飲むための芋焼酎造りが南九州の文化として根付き、アップデートを重ねながら現代の薩摩焼酎になりました。
伝統的な酒造りの技術や文化を継承しながらも、その時代に合った焼酎を作ることで、焼酎の文化を未来に残したいと考えています。今後は、日本だけではなく世界の人たちにも焼酎の魅力を知ってもらい、多くの人においしい焼酎を届けていきたいです。
五感を心地よく刺激するリラックスアイテムとして焼酎を楽しんで
――焼酎を飲む人たちにどのようなウェルビーイングを感じてほしいですか。
飲み会のお供としてだけではなく、五感を心地よく刺激してくれるアイテムとしてお家の時間にも焼酎を楽しんでほしいです。焼酎の香りの成分には、アロマオイルのようなリラックス作用のある成分が含まれています。寝る前のリラックスタイムに、香りを楽しみながらゆっくり飲むのもおすすめです。
嗜好品はその物自体の品質はもちろんですが、背景にある情報やストーリーを知ることでより豊かに感じられます。焼酎の作り手側の話を聞いたり、焼酎蔵に足を運んだりしながらお酒を味わうのも本当に素敵なことで、人生を豊かにしてくれます。焼酎の魅力をしるきっかけを私たちがつくることで、人生を豊かにする焼酎の世界の扉を開いてもらえたらと思います。
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今回のインタビューを通じて、LINK SPIRITSが一杯のお酒に込めた思いや、芋焼酎の歴史を知ることができました。味や香り、デザインにまでこだわった芋焼酎を飲む時間は、きっと多くの人を幸せにしてくれるはずです。