山登りや建築巡りなど、何歳になってもいろいろなことに興味を持っていたいもの。しかし、家族や友人と予定が合わなかったり、年齢を重ねるにつれて一緒に出かける人が少なくなったりして、やりたいことを諦めてしまうこともあります。
そんな人生後半の「やりたい」をサポートするのが、60代以上を対象とした体験・レジャーサービスの「シュミタイム」です。
シュミタイムを運営する株式会社ジェイエルネスの代表取締役CEO、樗澤 一樹(ぶなさわ かずき)さんが「シュミタイム」を始めた背景には、祖母の経験から感じた「孤独」という社会課題がありました。
趣味を通じて新しい人と出会い、やりたいことを1人でも気軽に実現できる。そんな「人生後半の自分時間」の楽しみ方について、樗澤さんにお話を伺いました。
株式会社ジェイエルネスの代表取締役CEO、樗澤 一樹さん
祖母の経験から生まれたサービス
――60代以上に年齢を限定し、同じ趣味を持つ人と知り合うきっかけをつくる「シュミタイム」を始めた経緯を教えてください。
祖父が亡くなってからというもの、祖母は60代前半からずっと1人暮らしをしていました。その後、認知症が進んで施設に入ることに。祖母の認知症が進んだ要因の1つとして、「孤独」があったのではないかと考えたことが、シュミタイムを始めるきっかけになりました。
かつて、私はまったく別の事業をしていたのですが、「孤独」のような日本の社会課題を解決するビジネスを始めたいと考え、それまでの事業を売却。新たに「シュミタイム」を手がけることにしました。
60代、70代になると、さまざまな事情から一人暮らしをする人も多いでしょう。実際、日本には現在、一人暮らしのシニアが約900万人います。
「山に行きたい」と思っても、30~40代の現役世代と違って体力は人それぞれ。一緒に行ける人がなかなか見つからないということもあり、実現できずにいる人もいるはずです。
そこで、友達や家族ではなく、「レジャーパートナー」のような人と一緒に山へ行くことが当たり前になればいいのではないか、と考えました。そのマッチングをしているのが、「シュミタイム」です。
「友達をつくる」のではなく、好きなことを通じて自然につながる
――年齢を重ねると、新しく友達をつくるのもおっくうになりますよね。
シュミタイムは友達づくりを目的としたサービスではありませんが、結果的に「好きなこと」を通じて、一緒に楽しめる人と出会うことができます。
シュミタイムのアプリから現地にいるガイドさんを選んでいただくと、興味・関心・好みが近い人たちが自然と集まる仕組みになっているのです。
お客様の日々のデータをもとに、興味や関心を類推して適切なツアーやガイドさん、ほかのユーザーをマッチングしていく。そうした仕組み自体を、これからさらに発展させていきたいと考えています。AIの進化により、マッチング精度もどんどん高くなっていくはずです。
――自分の好きなことを登録しておけば、興味のありそうな情報が自動的に出てくるイメージですね。デジタルに慣れていない方でも使えるのでしょうか。
LINEでログインしていただくので、電話番号やメールアドレスは必要ありません。LINEが使えれば誰でも利用できますから、気になる情報をチェックしてタップすれば、簡単に予約することが可能です。
登山から料理、ワインまで。約200種類の多彩な体験
――現在、どのぐらいのツアーがあるのでしょうか。
2026年9月現在は関東限定でサービスを展開しており、ツアーの数は150~200ほど。お客様の数もまだ5万人ほどですが、2026年12月には関西でもサービスを展開していくので、これからさらに増えていくことを期待しています。
ツアーの内容は、3,000メートル級の登山や建築巡り、週1回のレッスンなど多種多様。どれも1つのアプリから閲覧、予約することができます。
従来のツアーでは、あらかじめ用意された食事をみんなで食べるというスタイルが多いのですが、それが必ずしも理想とは限りません。少人数で、一人ひとりの好みやニーズに合わせた体験をどこまで実現できるか。そこが重要だと思っています。
――習い事もあるということですが、どんなものがありますか?
ワインの勉強、社交ダンス、料理教室、運動系など、さまざまです。特に人気があるのは料理やワインなど、食に関するものですね。お客様の85~90%は女性で、95%以上が、一人で参加されています。
お客様の要望が上がってきたら、そのサービスをすぐに作って、すぐに届ける。そうしたことを、日々行っています。
――お一人で参加される方が多いのですね。
はい。お仕事をされている方も多く、休みの日は介護があるというケースもあります。
そうすると、自分のために時間を使えるのは月に3~4日程度。「あと5年は元気でいられる」と仮定したとき、限られた時間を充実したものにできるかどうかは、とても重要なことではないでしょうか。
夫や子どもに相談したり、一緒に行ける友達を探したりするのではなく、シュミタイムのアプリを開けば、やりたいことをすぐに実現できる。そんなサービスになれば素晴らしいですよね。
人生後半の自分時間を自由に楽しみ、やりたいことを実現するために、シュミタイムを活用していただきたいと思います。
――実際に利用された方からは、どんな声がありますか。
お客様からのフィードバックは、すでに何千件といただいています。
宮崎に住み、子どもに会うために月に何度か横浜を訪れていた方は、かねてより横浜への移住を考えておられたものの、地元の友達とのつながりもあり、なかなか踏み切れなかったそうです。
そんな時にシュミタイムの存在を知り、「知らない土地に行っても、一緒に遊べる人が見つかりそうだ」と感じて、シュミタイムのアプリを開けば、やりたいことをすぐに始められる。そんなサービスになれば素晴らしいですよね。
「孤独」という根深い課題があるからこそ、「シュミタイム」の存在意義があります。このサービスを通じて、人生を変えるような体験をしていただければと願っています。
2026年12月から関西でも展開予定!
――今後、関西でもサービス展開されるとのことで楽しみです!予定されている新しいツアーやおすすめのツアーがあれば教えてください。
12月からは和歌山・奈良エリアを中心に、ニッチな関心にも応えられるような、上質なサービスを企画中です。
バスツアーは12名ぐらいの少人数なので、同窓会のような雰囲気があります。大型バスでは入っていけないような狭い道にも進めますから、「山の上まで行って景色を見る」というようなドライブも可能です。
60代以上と年齢を限定しているので、「若い人に迷惑をかけないかな」と心配せずに参加できるのも、シュミタイムの特徴です。
――関西でも習い事などを展開していく予定ですか?
段階的に、習い事なども増やしていきたいと思っています。今はレジャーが中心ですが、観劇や美術鑑賞などエンターテインメント全般をカバーしていくつもりです。
「孫と一緒にハイキングに行きたい」といった要望もありますので、そうしたニーズにも今後、応えていきたいですね。
取材を終えて
年齢を重ねると「気力・体力がなくなって、できることが少なくなる」というイメージを持っている人もいるかもしれません。しかし実際には、「一緒に行く人がいない」「家族には頼みにくい」といった理由で、やりたいことを諦めてしまう人も多いとのこと。
大人になって友達を作るというのは気恥ずかしいものですが、「やりたいこと」を通じて同じ趣味・関心がある人と緩やかにつながるということは、ある意味、理想的な人間関係なのかもしれません。
ツアーの参加者は60歳以上の方のみというのも魅力の一つ。一緒に参加した若い方々に迷惑をかけないようにと無理したり、頑張ったりすることなく自分のペースで参加できるのが安心できるポイントだと感じました。
シュミタイムのサービスを通して「やってみたい」を1つずつ実現し、人生後半の毎日をより豊かな時間にしたいものですね。