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書く瞑想~ジャーナリングで心を整える方法(後編)

目標や願いを現実に近づける力、そして毎日の心を整える力——。前編では、「書くこと」がもたらす深い効用について、古川武士さんに伺いました。後編では、その効果を日常に活かすための実践編として、ジャーナリングの書き方や、書くことが苦手な人でも続けられる工夫について詳しくご紹介します。自分らしく、無理なく続けられる「書く瞑想」の第一歩を一緒に探っていきましょう。

古川武士(ふるかわ・たけし)さん

習慣化コンサルティング株式会社代表取締役。関西大学卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。5万人以上のビジネスパーソン育成と1000名の個人コンサルティングを行う中で、「習慣化」が人生と組織の根幹にあると確信し、習慣化専門コンサル会社を設立。著書は『書く瞑想 1日15分、紙に書き出すと頭と心が整理される』ほか多数で、累計120万部を突破している。

手書きorタイピング。どっちがいいの?

――書くのはやはり手書きがいいのでしょうか。

これは人それぞれだと思います。手書きの方が心に響くという人も多いですし、自分の文字と向き合うことで、深い内面対話になるという面もあります。そういう方には、ぜひ手書きで試してみてほしいですね。

一方で、自分の字を見るとテンションが下がるとか、検索できないのがストレスになるという人もいます。そういう方には、無理せずタイピングで大丈夫です。大事なのは「書く」こと自体よりも、「言語化すること」。どんな方法でも、思考を外に出すことが目的ですから。

最初からたくさん書けなくても大丈夫です。最初の1週間くらいは、1つでも2つでも、気づいたことをメモする感覚でOK。少しずつ書けるようになっていきますし、完璧なものを書く必要もありません。あくまで“日記”ではなく“吐き出し”ですから。

継続のための工夫「グループづくり」

――「書くのが苦手」という方に向けて継続のための工夫を教えてください。

著書にもいろいろ書いていますが、人と話すことで気づきを得るタイプの方もいますよね。そういう人にとっては、書くことが「1人で完結してしまう」のが嫌なのかもしれません。そんな場合は、仲間と「今日のプラスとマイナス」を共有し合うようなグループをつくると、やる気が出ることもあります。

つまり、「書くのが苦手」というより、「1人で向き合うのが苦手」という人もいる。そういう方は、他の人とコミュニケーションしながら取り組むのが合っているかもしれません。外交的な人は誰かに見てもらうことがモチベーションになるし、逆に内向的な人は、人に見せない「自分だけのノート」に自由に書く方が合う場合もある。

私はどちらかというと、1人でじっくり書きたいタイプですけど、外交的な人にとっては、人とつながりながら書く方がしっくりくるのかもしれませんね。
――それぞれに合ったスタイルがあるんですね。

結局のところ、瞑想でも向き・不向きがあるように、ジャーナリングも合う人と合わない人がいます。だから、「なんかこれ、良さそう」とピンときた人がやってみればいいと思うんです。合わない人に無理にすすめる必要もない。
ただ、自分に合うかどうかを知るには、少しやってみること。書くことで何かが変わる、そんな体験を一度してみる価値は、誰にとってもあると思いますよ。

書いた内容は「見返す」ことで本質が見える

――書いた内容はどのように活用していますか?

私が提案しているのは、「マンスリージャーナリング」といって、1か月に一度、自分の記録をざっと振り返って棚卸ししてみることです。そのときにおすすめなのが、書いた内容を俯瞰して、「大きなマイナス3つ・プラス3つ」を見つけてみること。多くの場合、この上位3つが、その月のテーマの8割を占めていることが多いんです。

たとえば、同じような悩み、たとえば夫婦関係、職場の人間関係、食べすぎ・飲みすぎといったテーマが何度も出てくることに気づくはずです。そうなると、自然と「自分の本質的なテーマ」が見えてくるんですね。 赤ペンやマーカーで印をつけながら読み返して、「自分は結局ここでつまずいているんだな」と把握することが大事です。

この振り返りに役立つツールとして、本の中でも紹介している「インパクト図」もおすすめです。テーマごとの影響の大きさを整理することで、優先的に取り組むべき課題が見えてきます。
さらに最近では、ChatGPTなどのAIツールも活用できます。たとえば、書いた内容をコピペして「インパクトの大きいテーマ順に整理してください」と依頼すれば、自動的にランキングしてくれたり、「今月取り組むべき3つの課題を挙げてください」といった具体的なアドバイスも得られます。まさにカウンセリングを受けているかのようなサポートが受けられます。すごい時代になりましたよね。

ただ、手書きのジャーナリングであっても、自分で読み返すことで自然と俯瞰できるので、まずは月に一度の振り返りを習慣にするのが効果的だと思います。

まずは1日1%、15分の習慣から

――最後にこれから書く習慣を始めたい人へのメッセージをお願いします。

ジャーナリングは、自分の人生を能動的に生きるための小さな第一歩です。一日15分の「書く瞑想」で、自分を振り返り、未来を描く。それを続けていくうちに、自己効力感が高まり、人生が少しずつ整っていく実感が得られると思います。
朝の時間、会社に早めに着いて15分だけ書いてみる。そんな気軽なスタートでいいんです。自分を整えるための一番やさしい習慣、それが「書く」ことだと思っています。

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インタビューを通して、書くことがこんなにも人生を変える力を持っているのだと気づかされました。「願望を書くと叶う」だけでなく、感情を整理し、毎日の幸福度を上げていく。古川さんの言葉には、一貫した実践と説得力がありました。まずは今日から、プラスとマイナスを書き出す小さな習慣を始めてみようと思います!

書く瞑想 1日15分、紙に書き出すと頭と心が整理される