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【ウェルマネー】第1回:“お金”と“幸せ”ってどんな関係!? ~ファイナンシャルウェルビーイングの基礎知識を学んでみよう~

「お金がたくさんあれば幸せなのか」、多くの人がそんな疑問を抱いた経験があるのではないでしょうか。「ファイナンシャルウェルビーイング」は、その答えを示す新しい考え方です。

この記事では、ファイナンシャルウェルビーイングの意味や、ファイナンシャルウェルビーイングを高める具体的な方法を解説します。お金との付き合い方を見直し、より充実した毎日を送るためのヒントにしてください。

ファイナンシャルウェルビーイングとは

ファイナンシャルウェルビーイングとは、お金に関する不安から解放されて、充実した人生を送るための考え方です。最初に、ファイナンシャルウェルビーイングがどのようなものかを解説します。

そもそもウェルビーイングとは?

ファイナンシャルウェルビーイングを理解する前に、「ウェルビーイング」について確認しましょう。ウェルビーイング とは身体的・精神的・社会的に満たされた、持続的で多面的な幸福な状態を意味します。

アメリカの調査会社ギャラップ社は、ウェルビーイングを以下の5つの要素に分類しています。

・キャリアウェルビーイング:仕事における幸福
・ソーシャルウェルビーイング:人間関係における幸福
・ファイナンシャルウェルビーイング:経済的な幸福
・フィジカルウェルビーイング:身体的な幸福・コミュニティウェルビーイング:地域社会における幸福

このように、ファイナンシャルウェルビーイングは、ウェルビーイングの構成要素の一つであるとわかります。幸福を得るには、経済的な安定や自立が欠かせないのです。

ファイナンシャルウェルビーイングの定義

ファイナンシャルウェルビーイングは、お金に焦点を当てたウェルビーイングの一部です。アメリカの消費者金融保護局(CFPB)は「現在と将来の経済的な義務を十分に果たし、経済的な安心感をもって人生を楽しむための選択ができる状態 」と定義しています。さらに、以下の4つの要素で構成されるとしています。

・日々の生活や毎月の家計を管理できている
・経済的ショックを吸収する能力がある
・自分の経済的目標に向かって順調に進んでいる
・人生を楽しむための選択をする経済的自由がある

CFPBによる定義や要素から、ファイナンシャルウェルビーイングはお金に対する安心感や自由度を持つことがポイントと考えられます。

ファイナンシャルウェルビーイングが注目される背景

ファイナンシャルウェルビーイングは、以前はあまり注目されていませんでしたが、近年その重要性が増しています。なぜ、今この概念が注目されるようになったのでしょうか。その背景を解説します。

将来に対する経済的不安の増大

近年、多くの人が将来の経済的な不安を強く感じるようになっています。生命保険文化センターの「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、82.2%の人が自分の老後生活に「不安感あり」と答えています。

少子高齢化によって年金制度の将来への不安や、不況によって勤務先で働き続けられるか不安になるなど、多くの要因があると考えられます。

このような状況により、個人の経済的自立と将来への備えへの重要性が高まり、ファイナンシャルウェルビーイングに関心が高まっていると考えられます。

価値観の変化

お金に対する価値観は、「より多く稼ぐ」から「よりよく使う」へと変化しつつあります。この変化の背景には、物質的な豊かさだけでは真の幸福は得られないという認識の広がりがあります。

たとえば、高収入で常に仕事に追われる生活よりも、適度な収入で自由な時間を楽しむライフスタイルを選ぶ人が増えています。つまり、単純な収入の多さだけではなく、経済的な安心感や自分の人生を自由に選択できることが、より重視されるようになっているのです。

このような価値観の変化が、新しい幸福感の指標としてのファイナンシャルウェルビーイングへの注目を集めています。

ファイナンシャルウェルビーイングに影響する要因

個人のファイナンシャルウェルビーイングは、どのような要因に影響を受けるのでしょうか。ここでは、ファイナンシャルウェルビーイングを変化させる主な要因を紹介します。

心理的な経済的ゆとり

ファイナンシャルウェルビーイングにおいて、実際の年収や資産以上に重要なのは、主観的な経済的ゆとり感です。経済的な不安やストレスを感じていると、たとえ収入が多くても幸福感は得られにくくなります。

たとえば、高収入であってもローンや教育費などの支出に追われていると、心理的な余裕は少なくなります。一方で、年収が低くても支出を抑え、計画的に貯蓄できていれば、経済的な安心感を得ることができます。

このように経済的な状況をどのように捉え、心のゆとりを持てるかがファイナンシャルウェルビーイングを保つうえで重要です。

人生における選択の自由

人生における選択の自由は、ファイナンシャルウェルビーイングと密接な関係があります。経済的な余裕があるほど、仕事、住居、余暇の過ごし方のような、人生のさまざまな場面で自分の望む選択がしやすくなるからです。

たとえば、経済的に余裕があれば、やりがいのある仕事を選んだり、趣味に時間を使ったり、旅行を楽しんだりできます。逆に、経済的な制約があると、やりたいことを諦めざるを得ない状況に陥りやすく、それがストレスや不満につながる場合もあります。

このように、人生における選択の自由度が高いほど幸福感や満足感が高まり、ファイナンシャルウェルビーイングも向上するといえるでしょう。

金融リテラシー

「金融リテラシー」とは、お金に関する知識や判断力のことを指し、ファイナンシャルウェルビーイングに大きな影響を与える重要な要素です。金融リテラシーが高ければ、自分で適切な生活設計や投資判断を行うことができます。

たとえば、投資や保険、税金に関する知識があれば、資産を効果的に増やしたり、リスクに備えたりすることができます。一方で、金融リテラシーが低いと、詐欺や悪徳商法に騙されやすくなったり、不適切な金融商品を選んで損失を被るリスクが高まります。

このように、金融リテラシーは経済的な安定のために主体的に行動するうえで重要な役割を果たします。

ファイナンシャルウェルビーイングを高めるための具体的な行動

これまでの内容を踏まえ、ファイナンシャルウェルビーイングを高め、物心両面で豊かに生きるための具体的な行動について解説します。

計画的なお金の管理

計画的なお金の管理は、ファイナンシャルウェルビーイングを高めるための最初のステップです。まず、収入と支出を正確に把握し、無駄な出費を見直すことで、将来の目標達成に向けて貯蓄や投資に回す資金を増やすことができます。

具体的には、保険料のような固定費の見直しや、衝動買いの抑制などによる無駄な支出の削減が考えられます。また、借り入れを必要最小限にすることも大切です。

このように、計画的なお金の管理は現在の生活の質を維持しつつ、将来への備えを可能にします。

貯蓄と資産形成

貯蓄と資産形成は、ファイナンシャルウェルビーイングを高めるうえで欠かせない要素です。貯蓄や資産は、経済的なゆとりや人生の選択肢の拡大につながります。
まずは、老後資金や教育資金など、目的に応じた長期的な資金計画を立て、計画的に貯蓄や投資を続けることが重要です。また、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などの税制優遇制度を活用することで、より効率的に資産を増やすことができます。

このように、計画的な貯蓄と資産形成を通じて経済的な自立を達成することで、ファイナンシャルウェルビーイングをさらに高めることができるでしょう。

キャリアアップ

着実なキャリアアップは、ファイナンシャルウェルビーイングを高めるための重要な要素です。収入の増加だけでなく、やりがいや生きがいを見つけることにもつながるからです。

たとえば、資格取得や研修を受けるなどの自己投資によってスキルを磨けば、職場での評価が高まり、昇給が期待できるでしょう。また、スキルアップを通じて、より良い条件の仕事に転職する可能性も広がります。いずれの場合も、経済的な面だけでなく、仕事へのやりがいも向上するでしょう。

このように、キャリアアップは経済的安定と精神的充実の両方をもたらし、仕事を通じた自己実現や生きがいの獲得にもつながります。

ファイナンシャルウェルビーイングを高め、お金に振り回されない幸福な人生を

ファイナンシャルウェルビーイングは、お金と幸せの関係を新たな視点で捉える概念です。単なる金銭的な豊かさではなく、経済的な安心感と自由の獲得が重要です。
ファイナンシャルウェルビーイングを高めるためには、計画的な家計管理、長期的な資産形成、そして継続的なキャリアアップといった具体的な行動が必要です。お金との健全な関係を築き、自分らしい充実した人生を送りましょう。


執筆:松田 聡子
明治大学法学部卒。ITエンジニア、国内生保法人営業を経て2009年よりFPとして独立。企業型確定拠出年金、FP受験講座講師、個人・法人への相談などに加え、2020年より金融ライターとして執筆を開始。保有資格はCFP®、DCアドバイザー、証券外務員二種。