「ウェルビーイング」の実現には、経済的な安定が欠かせません。現代では、貯金だけでまとまった資産を作るのは難しく、投資に取り組む必要があります。
この記事では、昭和から令和にかけて変わりゆくお金についての常識や、初心者が投資に取り組むためのポイントを解説します。
今では非常識になった?昭和や平成のお金にまつわる常識
昭和や平成の時代には、お金に関する固定観念が強く根付いていました。たとえば、昭和生まれの親御さんから、以下のようなことを言われた経験はないでしょうか。
・お金はたくさんあるほど幸せになれる
・プライベートより仕事を優先すべき
・人前でお金の話はすべきでない
・家を持ってこそ一人前
・お金は銀行や郵便局に預けていれば安心
・投資はギャンブルのようなものだからやめるべき など
これらは、高度経済成長期やバブル期のように、右肩上がりの経済成長を前提とした考え方といえます。しかし、少子高齢化や終身雇用の崩壊が進み、人生100年時代といわれる現代において、これらの考え方は必ずしも当てはまりません。
自分の価値観やライフプランに合った働き方やお金との付き合い方を考えることが、令和時代を生き抜くために重要なのです。
貯蓄から投資へ――令和時代に貯金だけでは不十分な理由
昭和や平成の時代にはタブー視されていた投資が、令和時代には必要とされるようになりました。なぜ、今は貯金だけでは不十分なのでしょうか。
低金利時代に貯金だけでは資産は増えないから
令和の現代は、ただお金を貯金しているだけでは資産を増やせません。マイナス金利政策は解除されたとはいえ、それでも預貯金の金利は依然としてゼロに近い水準です。
たとえば、1990年頃には定期預金の金利が約6%もありました。 そのため、無理に投資でリスクを取らなくても預貯金だけで資産を増やせたのです。しかし、今のような低金利のもとではお金をただ銀行に預けておくだけでは、むしろ実質的な価値が目減りしてしまう可能性もあります。
だからこそ、今の時代は「貯蓄から投資へ」という発想の転換が必要となるのです。
貯金だけではインフレリスクに対応できないから
物価が上昇するインフレ下では、貯金だけでは将来の生活水準を維持できなくなるでしょう。なぜなら、物価が上がれば、同じ金額で買えるものが減ってしまうからです。将来も安心して暮らしていくためには、物価上昇に負けないようにお金を増やす必要があります。
日本ではバブル崩壊後、長らくデフレが続いてきましたが、状況は変わりつつあります。2023年度の消費者物価指数は前年度比3.0%上昇しており 、インフレ傾向が鮮明になっています。
投資には資産を増やすだけでなく、インフレから資産を「守る」役割もあるのです。
老後に年金だけに頼らないための自助努力が必要だから
老後の生活を年金だけに頼るのは難しくなっています。少子高齢化が進行し、年金財政の悪化が懸念されるためです。
2023年の出生数は約75万人と前年比5.1%減少し、過去最低を更新しました。 現役世代が高齢者を支える年金制度は維持されるでしょうが、年金だけで十分な生活水準を保つのは困難になると予想されます。
そのため、投資などを通じた自助努力で老後の資金を準備することが、今後ますます重要になってくるのです。
長寿に備えてより多くの老後資金を準備しなければならないから
人生100年時代とも呼ばれる現代において、安心して老後を過ごすには従来以上に多くの資金が必要となります。厚生労働省の令和5年簡易生命表によると、男性の平均寿命は81.09歳、女性の平均寿命は87.14歳と、男女ともに寿命は延び続けています。
たとえば、65歳で退職し、95歳まで生きると仮定すると、30年間もの老後生活を送ることになります。ゆとりあるセカンドライフを楽しむためには、生活費や医療費といった、長期間にわたる出費に備えなければなりません。
そのため、従来の貯蓄に加えて、投資による資産形成が重要性を増しているといえるでしょう。
初心者でも取り組みやすく!投資環境の変化
投資が身近とはいえなかった昭和の時代に比べ、現代は投資環境が整備され、初心者でも気軽に投資を始められるようになりました。
投資商品の多様化と低リスク商品の登場
かつては、投資といえば株式投資が主流でした。しかし、現在は投資信託をはじめ、不動産投資やFXのような、多様な投資商品が登場しています。自分の知識や経験、投資目標に合わせて、最適な商品を選択できるようになりました。
また、投資初心者の方でも始めやすい、低リスクの商品も増えています。たとえば、2003年には個人向け国債が登場 しました。 元本保証の商品や、リスクを抑えた投資信託など、選択肢は広がっています。
情報へのアクセスの向上とコストの低下
インターネットの普及により、投資に関する情報へのアクセスが格段に向上しました。投資初心者でも、オンラインでさまざまな情報を簡単に入手できるようになっています。
また、ネット証券の台頭により、株式や投資信託の売買手数料が大幅に低下しました。さらに、100円から始められる投資信託のような、少額から投資を始められる商品も増えています。
これらの変化により投資のハードルが下がり、より多くの人が資産運用に取り組みやすい環境が整ってきました。初心者にとっても、投資を身近に感じられる時代になったといえるでしょう。
国も支援制度で投資による資産形成を後押し
近年、国も投資による資産形成を積極的に後押ししています。その代表的な制度が、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)です。これらの制度を活用すれば、税制優遇を受けながら将来に向けた資産形成を進めていけます。
iDeCoやNISAは少額からの積立投資が可能なため、初心者でも無理なく始められます。このような支援制度をうまく活用すると、将来の経済的安定に向けた一歩を踏み出せるでしょう。
投資の初心者が「貯金一辺倒」から卒業する方法
これまでの内容を踏まえ、今までお金はすべて預貯金にしていた人が、投資を始めるための方法を解説します。
投資についての最低限の知識を身につける
投資を始めるにあたっては、いきなり株や投資信託を買うのでなく、まずは最低限の知識を身につけましょう。貯金は元本が保証されていますが、投資は買った商品が値下がりして損をするかもしれません。
ただし、投資のリスクはゼロにはできませんが、抑えることは可能です。長期・積立・分散といったリスクを軽減する方法について、頭に入れてから始めるとよいでしょう。
自分のリスク許容度を把握する
リスク許容度とは、投資においてどの程度のマイナスなら受け入れられるかの度合いです。リスク許容度が高いほど多くのリスクを取れ、低いほどリスクを許容できません。リスク許容度を図る要素には、以下のようなものがあります。
これらの要素を総合的に判断し、自分のリスク許容度は高めか低めか、または中程度かなどを判断します。リスク許容度が低い人がリスクの高い投資をするのは避けましょう。
少額から始められる投資方法を取り入れる
初心者はまず、少額から始められる投資に取り組んでみましょう。最初から大金を投資して損をしてしまうと、「二度と投資をしたくない」と思ってしまうかもしれません。
たとえば、100円から始められる投資信託の積立や、1株から買える株式投資などが始めやすいでしょう。また、最近ではポイントだけで金融商品が買える証券会社もあります。
このように最初はなくなっても困らない金額で始めて、金融商品の値動きを経験してみましょう。
長期的な視点を持って投資に取り組む
投資というと株式のデイトレードのように短時間で大きな利益を狙う方法をイメージするかもしれません。しかし、初心者には積立投資のような、長期で資産を成長させる方法が適しています。
たとえば、2024年8月に東京株式市場では過去最大の株価下落がありました。そのときに投資を始めたばかりで、値下がりした運用商品を売りたくなった初心者もいたのではないでしょうか。
しかし、このような一時的な値動きに一喜一憂せず、淡々と投資を続けていく姿勢が大切なのです。
情報収集の方法を身につける
投資を始めるうえで、信頼できる情報源は非常に重要です。インターネットでは投資に関するさまざまな情報に触れられますが、間違った情報もあるため、注意が必要です。を玉石混交の情報が溢れており、そこで、信頼できる情報源を持つことが大切になります。
具体的には、金融庁のような公的機関のウェブサイト、信頼できる金融機関のレポート、専門家の監修がされている書籍などを参考にします。できれば複数の情報源を比較し、慣れてきたら自分なりの分析を加えるとよいでしょう。
専門家のアドバイスを参考にする
投資は自己責任ですが、だからといってすべてを自分ひとりで抱え込む必要はありません。特に初心者は、ファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家に相談してみるのもよいでしょう。
FPは相談者のライフプランに合った投資方法をアドバイスしたり、投資に関する疑問や不安にも答えてくれたりするので、安心して投資を始められます。
最終的な投資判断は自分でする必要がありますが、専門家の意見を参考にすると、より適切な投資判断ができるでしょう。
まとめ:投資は「自分の人生を豊かにするツール」
投資は単にお金を増やすためのものではなく、自分らしく生き、ウェルビーイングを実現するためのツールです。投資を通じて経済的な安定を得られると、自分の価値観に合った生き方を選択できる自由が広がります。
ただし、投資には常にリスクが伴います。自分の状況をよく理解し、無理のない範囲で取り組む必要があります。精神的にも経済的にも豊かな人生のために、第一歩を踏み出しましょう。