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理想の暮らしは「間取り」からはじまる。全国の建築士と出会える家づくりサービス「madree」とは?

家づくりを考え始めると最初に立ちはだかるのが「間取り」の悩み。そんな声に応えるのが、「madree(マドリー)」です。全国の建築士に間取り作成を依頼できる新しいサービスで、これまでに公開された間取りは1800件以上。今回は立ち上げからSNS活用、そして間取りがもたらす暮らしとウェルビーイングについて、madreeを運営するスタジオアンビルト株式会社の山川紋さんにお話を伺いました。

建築士が手がける、暮らしに寄り添う間取りサービス

--まず「madree」とはどのようなサービスなのでしょうか?

「madree」はこれから注文住宅を建てようと考えている施主様向けの間取り作成サービスです。一般的には、住宅メーカーに相談し、営業担当の方が最初の間取りを提案するケースが多いと思いますが、「madree」ではその前の段階で、建築士に要望を伝え、間取りを作成してもらうことができます。

住宅メーカーに相談すると、住宅メーカーの規約や仕様に縛られてしまうことも少なくありません。一方で、建築に関する専門知識を持つ設計士が対応することで、より柔軟で実用的なアイデアが生まれやすくなります。つまり、実際に建築設計を手がけるプロが直接対応することによって、理想に近い住まいづくりが可能になるのです。

「インスタから火がついた」間取りのシェア文化

--Instagramでの発信もユニークですね。始めたきっかけは?

サービス開始は2018年ですが、当時はまだInstagramに間取りを投稿している人はほとんどいませんでした。現在では多くの方が間取りをシェアしていますが、おそらく「madree」がその火付け役のひとつになったのではと思っています。

当時見かけたのは、家づくりに悩んでいる一般のユーザーの方が、間取りをSNSに投稿して「この間取りどう思いますか?」と意見を募っているようなものでした。実際に「#間取り迷子」といったハッシュタグもあり、みなさん本当に悩まれている様子でした。

私は長年設計事務所で働いていたのですが、そこで投稿されている間取りを見て、「これは建築の専門家が関われば、もっと良くできる」と強く感じたんです。そうした課題意識から、「madree」という間取り作成サービスをスタートさせました。

今では間取りの投稿だけでなく、住宅展示場を訪問するインスタライブや、設計の専門家による間取り解説なども配信しています。ライブを通じて、「こんな発想があったんだ」と驚かれる方や、「客観的な意見が聞けてよかった」という反響も多いですね。

間取りづくりの中心は「家事動線」

--お客様から多い要望はどのようなものでしょうか?

間取りのご要望の中で、最も多いのが「家事動線」です。これは日本の住宅設計における長年の課題であり、今も多くの方が重視されています。洗濯や料理などの家事を効率的にこなすため、動線を短く、スムーズにする設計が求められています。

最近は「来客に生活感を見せたくない」というニーズも増えており、来客用と家族用の動線を分ける間取りが人気です。たとえば、玄関→シューズクローゼット→洗面所→パントリー→キッチンとつながる動線で、帰宅しながら荷物を片付けたり、手洗いや着替えができるような設計は、多くのお客様から好評をいただいています。

こうしたニーズを強く意識するようになったのは、サービス立ち上げ当初からの大きな気づきでもありました。当時は、注文住宅の営業担当の方々もまだその重要性に気づいておらず「少し不便でも仕方ない」と受け入れてしまうお施主様も多かったように思います。

しかし、私たちがInstagramで間取りの事例を発信するようになってから、家事動線への意識が広まり、営業担当の方々もより真剣に取り組んでくださるようになりました。

とはいえ、すべての営業担当が設計の専門家というわけではなく、提案に限界がある場合もあります。そこで、私たちは「madree」とは別に、工務店や住宅メーカー向けの「マドリーデータバンク」というサービスを開発しています。営業担当者がより良い間取りを提案できるようサポートするためのツールです。

「暮らしに合わせて家をつくる」ウェルビーイングな間取りとは

--間取りと心身の健康、ウェルビーイングの関係についてどうお考えですか?

私個人の考えになりますが、以前、ある有名な建築家が設計したマンションに住んでいたことがありました。その家では、玄関にたどり着くまでに中庭を通るのですが、そこに紅葉が広がっていて、「帰ってきてよかったな」と自然と気持ちが満たされたのを覚えています。

家の中に入っても、風の通りや光の入り方などが丁寧に設計されていて、とても心地よく暮らせました。そうした経験から、空間のつくり方ひとつで、心や体の状態にも大きく影響があるのだと実感しました。

賃貸や建売住宅では、どうしても「家に自分たちを合わせて暮らす」必要がありますが、注文住宅であれば、自分たちの趣味や暮らし方、家族の想いを反映させた間取りにすることができます。自分たちの暮らしを体現できる唯一の方法だと思います。だからこそ、注文住宅を建てるのであれば、ぜひ間取りにこだわって、自分たちにとって本当に暮らしやすい形を追求してほしいと願っています。

これからの間取りのあり方とは?

--今後、求められる住宅や間取りの傾向はありますか?

今はSNSを通じて、注文住宅のデザインや間取りなど、さまざまな事例を見ることができるようになりました。その一方で、「何が良くて何が悪いのか」といった判断が難しくなってきているとも感じています。何でも素敵に見える反面、逆に何でも不安に感じてしまうような面もあると思います。

だからこそ、信頼できる住宅メーカーや営業担当の方としっかり相談しながら、「自分たちの暮らしに本当に合った間取り」を見つけていくことが、これからの家づくりではより大切になってくるのではないでしょうか。

まとめ

家づくりの第一歩とも言える「間取り」に焦点を当てた「madree」。

話を聞いて印象的だったのは、設計のプロだからこそ生まれる発想の数々と、SNSを通じたユーザーとの対話から生まれる共創の姿でした。日々の暮らしに本当に寄り添った家をつくる――そんな当たり前のようで難しい願いを叶えてくれるのかもしれません。