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インフレと低金利対策にNISAを活用【第6回ウェルマネー】

インフレや低金利によるお金の不安は、ストレスの大きな原因になります。投資による資産形成は単なる資産の増加だけでなく、将来への安心感をもたらし、より充実した人生の選択肢を広げてくれるものです。

今回は、そんなファイナンシャル・ウェルビーイングを実現するための手段として、NISA(少額投資非課税制度)の活用法を紹介します。

インフレで10年後の100万円が実質80万円に?資産防衛の必要性

投資にはリスクがあり、ときには値下がりする可能性があります。それでもNISA
で投資をしたほうがいいのはなぜでしょうか。NISAを活用すべき理由を解説します。

日本はデフレからインフレへ

日本の物価は2021年後半から上昇傾向に転じ、デフレからインフレへと経済環境が変化しています。総務省の消費者物価指数によると、2024年12月の総合指数は110.7(2020年を100とした場合)となり、前年同月比で3.6%も上昇しました。

特に大きな上昇が見られた費目には、以下のようなものがあります。

・うるち米(コシヒカリを除く):65.5%
・外国パック旅行費:74.7%
・電気代:18.7%
・みかん:25.2%
・キャベツ:125.7%
・チョコレート:30.6%
・コーヒー豆:22.2%


この物価上昇の背景には、エネルギー価格の高騰や円安の影響があり、食料品を中心に幅広い商品で値上がりが続いています。特に生活必需品の価格上昇は、家計への影響が大きいといえるでしょう。

預貯金ではお金が増えない低金利

2024年3月に日本銀行のゼロ金利政策は解除されましたが、依然として預貯金だけでお金を増やすのは難しい状況です。日銀の2025年02月19日の データから、2024年以降の定期預金金利(1,000万円以上/1年)の平均年率の推移を見てみましょう。

・2024年1月~3月:0.005%
・2024年4月:0.026%(政策転換後初の上昇)
・2024年5月~6月:0.027%
・2024年7月:0.029%
・2024年8月:0.033%
・2024年9月:0.116%(大幅上昇)
・2024年10月:0.124%
・2024年11月~12月:0.126%
・2025年1月:0.127%
・2025年2月:0.131%


このように、定期預金金利は1年前と比べて約26倍に上昇しました。しかし、この金利水準では100万円を1年間預けても1,310円程度の利息にしかなりません。

預金金利は上昇傾向にあるものの、インフレ率と比較すると依然として低水準にとどまっています。預貯金だけで物価上昇による資産の実質的な目減りを防ぐのは難しい状況が続いているのです。

インフレから資産を守るための投資

インフレの状況下では、預貯金だけでは将来の教育資金や老後資金といったライフイベントに必要な資金の準備が難しくなります。たとえば、年間2%のインフレが続くと、10年後には現在の100万円の価値が約80万円相当まで目減りしてしまうのです。

そこで注目したいのが投資による資産の防衛です。投資には「儲ける」というイメージがありますが、将来必要な資金を確保し、インフレによる資産価値の目減りを防ぐ機能もあります。

投資によって、長期的なインフレが続いても将来の生活水準を維持する効果を期待できるのです。

2024年からの新NISA制度は生涯の投資枠が1,800万円に!

インフレと低金利対策にNISAが役立つのはなぜでしょうか。ここでは、NISAがどのような制度かを紹介します。

NISAなら投資の利益に税金がかからない

NISAは株式投資や投資信託で得た利益に税金がかからない制度です。通常、株式の売買益や配当金には20.315%の税金がかかりますが、NISAなら非課税となります。NISAには積立投資に特化したつみたて投資枠と、幅広い投資ができる成長投資枠の2つの投資枠があり、両者を併用できます。

金融庁「NISAを知る」 より

2024年からパワーアップしたNISA

2024年からNISAは大きく生まれ変わりました。まず制度が恒久化され、いつからでも始められるようになりました。非課税期間も無期限となり、非課税期間終了による売却を考える必要がありません。

非課税投資枠も大幅に引き上げられ、つみたて投資枠と成長投資枠を合わせてひとりあたり最大1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)まで投資可能です。また、保有している株式等の運用商品を売却した場合、その分の非課税枠は翌年以降に再利用できるようになりました。

このように制度が大幅に拡充されたことで老後資金や教育資金など、長期で準備すべき資金の運用に、より活用しやすい制度となっています。

投資初心者がNISAデビューで失敗しないコツ

NISAは投資初心者でも取り組みやすい制度ですが、投資である以上、損をする可能性もあります。ここでは、初心者がNISAを始める際に大きな失敗を避けるコツを紹介します。

まずはつみたて投資枠で少額投資から

投資初心者は、まずはつみたて投資枠の活用がおすすめです。つみたて投資枠の対象商品は、金融庁が定めた基準を満たす長期投資に適した投資信託のみが選定されています。

毎月決まった日に一定額を投資する積立投資なので、「いつ買えばいいのか」といった投資のタイミングを気にする必要がありません。また、ネット証券であれば月々100円程度から始められるため、少額でも投資に取り組めます。

このように、つみたて投資枠は投資初心者が投資の仕組みや値動きに慣れていくのに適した仕組みとなっています。

短期の値動きは気にしない

投資を始めると短期的な値動きに敏感になりがちですが、感情に流されてはいけません。たとえば、2024年8月5日に発生した日経平均株価の急落のように、市場は突然急変する場合があります。このような状況では焦って資産を売却したり、投資をやめたりする人も多いですが、値下がりは投資の一部であると割り切る必要があります。

特にNISAを利用したつみたて投資では、値下がりしたときこそ効果を発揮します。同じ投資金額でより多くの口数を購入できるため、将来の値上がり益につながる可能性があるためです。

市場の一時的な下落に動揺して積み立てを中断してしまうと、長期的な資産形成の機会を逃してしまう可能性があります。

使う予定のあるお金をNISAに回さない

NISAで資産形成を目指す場合でも、使う予定のあるお金を投資に回さないようにしましょう。急な出費や生活費に影響を及ぼす可能性があるため、投資資金はあくまで余裕のある範囲で設定する必要があります。

NISAの投資額はいつでも変更できるので、昇給などで収入が増えたときには増額、教育費のピーク時には減額といった調整が可能です。家計の状況に応じて見直し、効率のよい資産形成を目指しましょう。

投資初心者でも始められる!NISAの運用プラン3選

NISAはひとり1,800万円の非課税枠を自分のペースで活用できるため、さまざまな運用プランが考えられます。ここでは、活用法の一例を紹介します。

【子どものいない人向け】長期の老後資金準備プラン

夫婦でも独身でも子どもがいない人にとって、老後資金の準備は重要な課題です。運用益に税金のかからないNISAは、老後資金準備に適しています。老後資金は早くから時間をかけて積み立てると、毎月の負担を少なくできます。以下は、毎月5万円ずつ30年積み立てた場合の、運用シミュレーションです。

金融庁「つみたてシミュレーター」

上記はひとり分の結果なので、夫婦で同額を積み立てると2倍の資産額を期待できます。実際の運用ではこのとおりにはなりませんが、積立期間が長くなると、価格変動の振れ幅が均される傾向があります。

つみたて投資枠で積み立てる投資信託を選び、積み立ての設定をするとその後は「ほったらかし」でも自動的に買い付けが行われます。投資信託の選び方がわからない場合、金融機関が提供しているランキングなどのツールを参考にしてみましょう。

【子育て世帯向け】教育資金と老後資金準備のリレープラン

NISAの非課税投資枠が資産の引き出し後に再利用できるため、教育資金と老後資金準備に活用します。

【第1ステージ:教育資金準備(子ども0歳~18歳)】
・毎月3万円を積み立て(年間36万円)
・18年間の積立総額:648万円
・年利3%で運用した場合の想定資産:858万円(運用益210万円)


子どもの進学時に資産を全額引き出すと、積立額648万円相当の枠が再利用できるようになります。この枠を活用して、老後資金分の積み立てをします。

【第2ステージ:老後資金準備(子ども19歳以降)】
・毎月10万円を積み立て(年間120万円)
・15年間の積立総額:1,800万円
・年利3%で運用した場合の想定資産: 2,270万円(運用益470万円)

【成長投資枠の有効活用】米国株で毎月配当をもらう方法

成長投資枠を活用したい初心者におすすめなのが、米国高配当株への投資です。米国企業の多くは年4回(四半期ごと)の配当を支払うため、配当月の異なる銘柄を組み合わせると、毎月配当をもらえます。また、米国株は1株から購入できるため、少額から始められる点も魅力です。

以下は、年4回配当の銘柄の一例です。たとえば、コカ・コーラとP&Gとジョンソン&ジョンソンを1株ずつでも買うと、1月から12月まで毎月配当金を受け取れるわけです。
配当金を受け取る投資は長期保有が前提のため、取引のタイミングに悩む必要はありません。少しずつ買い増していくと、もらえる配当金も増えていきます。

まとめ:インフレ対策にNISAを有効活用しましょう

インフレが続くと、預貯金だけでは資産の実質的な価値の維持が難しくなっていきます。NISAを活用した非課税投資は、資産の価値の目減りを防ぐ有効な方法です。

投資は自分らしい生活を送るための選択肢を広げることにつながり、心の安定やウェルビーイングの実現も期待できます。まずは自分のライフプランに合わせて、無理のない範囲でNISAを活用した資産形成を始めてみましょう。

執筆:松田 聡子
明治大学法学部卒。ITエンジニア、国内生保法人営業を経て2009年よりFPとして独立。企業型確定拠出年金、FP受験講座講師、個人・法人への相談などに加え、2020年より金融ライターとして執筆を開始。保有資格はCFP®、DCアドバイザー、証券外務員二種。