ウェルチル

人生100年を楽しむためのウェルビーイングメディア

画像

vol.12「紙芝居アイドル・おきゃん」が描く世界への夢 【私と誰かにちょっといいこと】

レトロなワンピースをまとい、公園やイベントで紙芝居を披露する「紙芝居アイドル・おきゃん」さん。紙芝居を通じて子どもたちに笑顔を届ける一方、子育て広場の相談員として親子を支える活動も行っています。
紙芝居との出会いや活動への思い、そしてこれから挑戦したい夢について伺いました。

紙芝居との出会いは、育休中のワークショップ

――紙芝居の活動を始める前は、どのようなお仕事をされていたのでしょうか。

もともとは、ホテルの受付で働いていました。育休に入った時期が、ちょうどコロナ禍と重なっていたんです。不要不急の外出を控えなければならない状況で、子どもと家の中で過ごす時間が長くなりました。

大人と話す機会もほとんどなく、子育ての悩みを一人で抱えるうちに気分が落ち込み、産後うつのような状態になってしまって。「このままではいけない」と思い、それまで使ったことのなかったX(旧Twitter)で習い事を探すなど、家の外へ出るきっかけを求めていました。

そんなとき、「無料の紙芝居ワークショップ」という情報が目に留まりました。しかも、場所は家の近所。紙芝居なら子どもを連れて参加できるかもしれない思い、問い合わせたところ、赤ちゃん連れでも大丈夫とのことだったので、参加してみることにしました。

ワークショップには幅広い年代の方が参加されていて、温かく迎えてもらえました。

「ここなら、いろんな人と友達になれそう」
「人とのつながりを作れるかもしれない」

そう感じて、ワークショップが終わってすぐに紙芝居の師匠のもとに「弟子入り」しました。
紙芝居 おきゃん
――すぐに弟子入りされたのですね。もともと紙芝居をしてみたいという思いがあったのでしょうか。

絵を描くことが趣味なので、ワークショップに参加する前から「自分で絵を描いて紙芝居を作ってみたい」という気持ちはありました。
ただ、人前で話すことは得意ではなく、紙芝居をすることより、作ることに興味があったんです。デジタルで絵を描いてみようと思い、iPadを購入したりもしていました。

ところが、弟子入りした直後にデビューの日程が決まったんです!

子どもたちの前で初めて紙芝居を披露したところ、それがものすごく楽しくて。「もっといろいろな場所で紙芝居をやってみたい」と思うようになりました。

近所のお風呂屋さんにお願いして場所を提供していただいたり、そこで出会った人がまた別の機会をくださったり。通っていた美容院の人からも、『美容院の定休日にやってほしい』と声をかけていただいたりして、少しずつ活動の幅を広げていきました。
――ホテルのお仕事はその後、どうされたのでしょうか。

育休が明けてから、一度ホテルの仕事に復職しました。ただ、コロナ禍の影響でなかなかお客様が戻らない状況で、この先どうしていこうかと悩んでいました。

紙芝居だけで生活していけるのかという不安はありましたが、紙芝居一本で生計を立てている師匠の姿を見て、「私にもできるかもしれない」と思い始めました。

ホテルで働きながら紙芝居の活動を続けているうちに、紙芝居歴35年のベテランの方と出会いました。その方は「子ども広場」を運営していて、『人手が足りないから手伝ってほしい』と声をかけてくださったんです。

それを機にホテルを退職し、子ども広場をお手伝いすることになりました。

公園に子どもたちの笑顔を取り戻したい

――「紙芝居師」という職業が今でもあるのですね!普段はどのような場所で紙芝居を披露されているのでしょうか。

昔は公園で紙芝居をする人が多かったのですが、今は公園の許可をとるのがとても難しく、あまり見かけなくなりました。
夏休みなどには、ショッピングセンターや企業が主催するイベントで紙芝居をやってほしいという依頼はあるものの、紙芝居だけで仕事を成立させるのは、簡単ではないのが現状です。

一方で、最近は公園で遊ぶ子ども自体が少なくなっていることも気になっていました。公園で紙芝居をすれば、子どもたちが公園に足を運ぶきっかけになるかもしれない。にぎやかで、温かな雰囲気も作りやすいのではないかと思い、知り合いに相談したところ、協力してくれる人が現れました。

その人のおかげで、現在は毎月「5」のつく日に、昭和町駅近くの桃ヶ池公園で、紙芝居ができるようになりました。
紙芝居 おきゃん
――紙芝居で生計が立てられるようになってきた、ということでしょうか。

企業などに呼んでいただくイベントは、仕事として成立しています。ただ、公園での紙芝居については、採算は重視していません。

公園で紙芝居をする時には、手作りの駄菓子も販売しています。子どもたちが駄菓子を選ぶために、ずらりと列を作るんですよ!子どものお小遣いで買えるようにと、50円ほどの駄菓子が中心で、高くても120円程度です。

正直なところ、公園での紙芝居も駄菓子販売も、ほとんど利益は出ません。それでも、地域のコミュニティ作りや子どもたちが友達と集まるきっかけになればいいなと思い、楽しみながら続けています。

桃ヶ池公園で紙芝居を行うときは、16時ごろ公園に行き、まずは駄菓子の販売を始めます。その後、16時30分ごろから15分ほど紙芝居を披露し、再び駄菓子を販売。17時に2回目の紙芝居をして、18時ごろに終わるという感じです。
紙芝居 おきゃん

レトロな衣装で生まれた「紙芝居アイドル」

――「紙芝居アイドル」という肩書きは、どなたが考えたのですか?

師匠から突然、「君は今日から紙芝居界のアイドルね!」と言われたんです。
先ほどもお話したように、人前に立つことが苦手だったので「アイドル」という響きには、少し抵抗がありました。

でも、もともと1960~1970年代のファッションが好きで、「自分が好きな服を着れば、気分が上がって人前にも立てるかもしれない」と思い、「アイドル」という名前に合う衣装で紙芝居をやってみようと考えました。

イメージしているのは、昔の万博でコンパニオンの方々が着ていたユニフォームですが、今の時代にそのような洋服はなかなか見つかりません。

どうしようかなと思いながらInstagramを眺めていると、イメージにぴったりなレトロなワンピースを、オーダーメイドで仕立てている人を発見!色合いやデザインの希望をお伝えし、世界に一着だけの衣装を作っていただくことになりました。
紙芝居師 おきゃん
――紙芝居だけでなく、衣装まで含めて世界観が作られているのですね。「おきゃん」という名前にも、どこかレトロな響きを感じます。

「おきゃん」という名前も、師匠がつけてくださいました。
「おきゃん」は昔、「やんちゃな女性」という意味で使われていた言葉だそうで、師匠から見ると、私がそのイメージにぴったりだったみたいです。

最初はあまりピンときていなかったのですが、最近では近所の方からも「おきゃんさん」と呼んでいただくようになり、少しずつ、その名前にも愛着がわいてきています。

子育て広場でお母さんたちに寄り添うおきゃんさん

――子育て広場では、どのようなお仕事をされているのでしょうか。

子育て広場は大阪市の委託を受けて運営されている親子の居場所で、私は「相談員」という立場で働いています。

遊びに来られたお母さんたちの悩みを聞いたり、必要に応じて行政の窓口へつないだり。一般的な子育て広場では、スタッフが利用者同士の交流に深く関わらないことも多いのですが、私が働いている場所では、お母さん同士が自然に友達になれるような雰囲気作りを大切にしています。
紙芝居 おきゃん
――おきゃんさんご自身もお母さんですから、他のお子さんの面倒も見るとなると、
  体力も必要そうですね。

子育て広場を利用できるのは、3歳までの子どもです。私の子どもはすでに利用できる年齢を過ぎているので、広場に来る幼い子どもを見ていると、自分の子どもが小さかった頃を思い出し、懐かしい気持ちになります。

とはいえ、子育て広場の主な目的は、お母さんたちが安心して過ごせる場所を作ること。子どものお世話をするというよりも、お母さんの話を聞いたり、楽しく過ごしていただくための工夫をしたりすることの方が多いです。

私自身、育休中に孤独を感じた経験があるからこそ、お母さんたちが一人で悩みを抱え込まず、人とつながれる場所を作りたいと思っています。

海外の子どもたちにも、紙芝居の楽しさを届けたい

――おきゃんさんが今後、挑戦してみたいことを教えてください。

大阪・関西万博(EXPO 2025)の時に、「ジャパンエキスポ」へ出演させていただいたときに、「海外で紙芝居をしてみたい!」という夢ができました。

ジャパンエキスポは通常、フランスのパリで開催されているイベントですが、この時は特別に万博会場で開催され、海外の方に向けて日本語で紙芝居を披露する機会をいただいたのです。

言葉が通じるかと不安だったのですが、始めてみると、爆笑の渦!紙芝居の楽しさは英語が話せなくても伝わることを知り、それがきっかけで、海外に行って、現地の子どもたちを笑わせてみたいという気持ちが大きくなって。師匠が最近、メキシコに行っていたので、私もメキシコで紙芝居をしてみたいと思っています。
紙芝居 おきゃん
――紙芝居は言葉の壁も超えて、人と人を繋ぐのですね。

紙芝居が始まるまでは、演じる側と子どもたちとの間に少し距離があるのですが、終わるころにはハイタッチをするなどして、すっかり仲良くなれるんです。

この間も、紙芝居が終わった後に『もう1回やってほしい…!』と泣き崩れた子もいました。そこまで楽しんでくれたんだと思うと、本当に嬉しくなります。

私が紙芝居を始めた一番の目的は、「友達を作ること」です。実際に始めてみると、子どもたちだけでなく、大人の方とも友達になれることが分かりました。

紙芝居には、初めて会った人同士の距離を一気に縮める力があります。海外へ行く夢が叶ったら、紙芝居を通じて、世界中に友達を増やしていきたいですね!
◆イベント予告
最新のイベント情報はInstagramのストーリーズより
Instagram
Webサイト

◆桃ヶ池公園での紙芝居
毎月「5」のつく日に開催
取材を終えて

おきゃんさんの紙芝居には、子どもたちを笑わせたいという思いだけではなく、「人とつながりたい」という、ご自身の原点が詰まっていました。育休中に感じた孤独から一歩踏み出したことが、今では多くの子どもたちや保護者の笑顔につながっています。
「紙芝居で友達を増やしたい」。その夢は、大阪だけでなく、これから世界へ広がっていくのかもしれません。お近くの方はぜひ、桃ヶ池公園でおきゃんさんの紙芝居を体験してみてはいかがでしょうか。
ウェルチルロゴ
番組「ウェルチル 私と誰かにちょっといいこと」

関西テレビ放送
毎週金曜よる10時52分放送(関西ローカル)
次回もお楽しみに。