夢を語り合った街、悔し涙を流した街…。人生を語るうえで、思い出と『街』は切っても切れない関係にあります。
さらに、行きつけのお店や自分だけが知っているリラックスできる場所など、心の健康を支える≒ウェルビーイングな存在なのが『街』です。
この企画では、街をこよなく愛し、濃厚な時間を過ごしてきた芸人にフォーカスを当て、普段見ることができない素顔に迫ります。今回のゲストは、人気お笑い芸人・友近さん。第一回は、生まれ育った愛媛県松山市や、学生時代のエピソードについてお話を伺いました。
友近:
愛媛県出身。NSC卒業後は NHK新⼈演芸⼤賞で⼤賞、ABC お笑い新⼈グランプリで優秀新⼈賞を受賞するなど、お笑い芸人として活動する一方、女優として舞台、テレビドラマ、映画などに多数出演。2019年、『嘘八百』(18)で第28回日本映画批評家大賞助演女優賞を受賞。
また、友近サスペンス劇場をYouTube で公開し、第15回ロケーションジャパン⼤賞 審査員特別賞受賞。歌手「水谷千重子」や中高年プロアルバイター「西尾一男」としても活躍中。8月より明治座・博多座・新歌舞伎座で4度目の水谷千重子50周年座長公演を開催。
「田んぼがステージ」だった少女時代
--友近さんが生まれ育った愛媛県松山市はどんな街でしたか?
友近:
車があれば、海と川と空港に30分圏内で行けるコンパクトシティです。実家の近所は田んぼや空き地がたくさんあって、学校から帰ったら缶蹴りしたり、道路にチョークでかかしを書いたり……。中学生くらいまではだいたい外で遊んでました。犬の散歩ついでに田んぼで歌を歌ったり、一人で全役者をする「一人ドラマ」もしてましたね。観客は犬です(笑)。
--高校ではテニス部に入られたんですよね。
友近:
放課後は部活ばっかりでしたねぇ。でも休み時間はやっぱり、歌ったり、ものまねをして友達とずっと盛り上がってました。
--著書の『ちょっとここらで忘れないうちに』に、卒業アルバムの集合写真で一人だけ「無罪」と書いた半紙を掲げている写真がありました。
友近:
あれがもうね、すべてですね(笑)直前までたたんで隠してたから先生にもバレなくて。卒業アルバムを見て「なにしてんの!』ってなったんじゃないかな。習字の時間にも、大喜利みたいに「なんて書いたらおもろいやろ」って競い合ってて。
友近:
友達みんなお笑い偏差値めっちゃ⾼かったですね。今もその友達たちとのLINEグループがあるけど面白いです。年末とか休みに集まると、もうゲラゲラ笑ってます。
--その頃見て影響を受けたテレビ番組はありますか?
友近:
お笑いでいうと、『オレたちひょうきん族』と『元気が出るテレビ』はずっと見てました。後は大映ドラマの『不良少女と呼ばれて』など実録ものが好きであと『土曜ワイド劇場』みたいな、ちょっとませたドラマも好きでしたね。そういうのが好きな子が数人いて話ができたので、周りの環境に恵まれてたと思います。
観光スポットを紹介する合間に、ものまねやネタを
--学生時代から、地元テレビ局のレポーターをされていますよね。
友近:
大学時代に「学生レポーター」をはじめて、卒業後に道後温泉の旅館で仲居をしてたんですけど、そのときも兼業でレポーターを続けてました。
--仲居になったんですか?
友近:
二時間サスペンスの「温泉シリーズ」が大好きだったので、なにか事件が起きないかと期待して起きたらダメなんですけどね(笑)就職したんです。その仲居時代、松山の女の子を紹介する番組に、素人として出演したことがあって。ものまねをしたら、番組ディレクター兼カメラマンの人が「面白い」って言って誘ってくれたのが兼業のきっかけです。
--スカウトされたんですね。「テレビに出たい」気持ちはあったんでしょうか。
友近:
小学校の頃から、芸人になりたい気持ちはありました。面白いことを考えるのが好きだったので、それをプロの人に見てもらいたかったんです。それで、芸人とはちょっと違うけど、レポーターでも自分が面白いものを表現できるかなと。
--レポーターとしてどんなお仕事をされていたんですか。
友近:
地元の観光・グルメスポットに行って紹介したり、スタジオでFAXを読んだり、料理コーナーのアシスタントをしたり。レポーターの仕事はひと通りやらせてもらいましたね。仲居を辞めてリポーター1本に絞ってからは、夕方の帯番組に出演していたので。
--面白いものを表現できる機会はありましたか?
友近:
ときどきものまねやネタを入れたりしてたんですけど、編集でカットされることも多くて。「そうか、こういうことをするとカットされるんだ」「ここは使ってくれるんだ」とか、めっちゃ勉強になりました。
--ロケで行った場所で、印象に残っているお店やスポットはありますか?
友近:
道後温泉の商店街はとにかく充実してました。全国あちこち旅していると、シャッター街になっていたり、同じような店が多い商店街もあるんです。でも道後温泉はカフェとか焼き物とか、今治タオルとか、個性豊かな店が並んでいて、今も生き生きしています。
地元で出会えた『よき理解者』
--「伊予観光大使」も務められていますが、改めて、愛媛のオススメのスポットを教えてください。
友近:
やっぱり道後温泉かなあ(笑)。「美人の湯」と言われていて、肌がツルツルになります。それと奥道後温泉もかなり泉質がいいです。あと旅館とホテルのクオリティが高くて、老舗でも居心地がいいんです。レトロな旅館と今っぽいおしゃれなホテルが混在していて、バランスがいいなと思います。
--地元の街にいたときの、一番思い出深い出来事はなんですか?
友近:
よき理解者に出会えたことですね。「この人となら喋れる、感覚が合う」という人にたくさん会えました。高校の友人もそうですし、レポーター時代に見出してくれたディレクターさんには、地元・愛媛を舞台に私がプロデュースしたYouTubeドラマ『友近サスペンス劇場』のカメラマンもお願いしました。そういったつながりは、これからも大事にしたいですね。
--著書の中でも、「自分が面白いと思う人、感性が合う人の見極めがうまい」と書かれていましたね。
友近:
だいたい分かりますね。テレビとか雑誌を見てても、「ああ、この人感覚が似てるな。一緒にやってみたいな」と思ったら自分から声をかけます。無意識に探しているのかもしれない。楽しい人生を送りたいと思ったら、そういう人には自分からアプローチするのが一番です。逆に「違うな」と思ったら近づかない(笑)。無駄なく人生を送れている気がします。
第二回は、友近さんが若手芸人時代を過ごした「大阪の街」の思い出について語ります!