突き抜ける明るさで、見る人を元気にする「ひとみワールド」。今回登壇されるのは、アーティストであり、絵画講師としてたくさんの方々に絵を描く楽しさを届けている高橋ひとみさんです。テーマは「名作絵画を自分の感性で彩る大人の塗り絵」。その様子と感想をレポートします。
【登壇者プロフィール】高橋 ひとみさん
大阪芸術大学芸術学部美術学科絵画専攻卒業後、企画・開発デザイナーを経て、1997年にこども絵画教室「アトリエ♡キュート」を設立。現在は、子どもから大人までを指導。月4回ほど開催される、名画をもとにアクリル絵の具でペイントする「オトナのぬりえ」も好評!
ひたすら色鉛筆を動かして、塗り絵に没頭する“チル”なひととき
ピンク色のジャケットを羽織り、シンボリックなメガネで颯爽と登場した高橋さん。拍手で迎えられると、くるっと一回転! お茶目なお人柄が伺えます。
まずは「オトナの塗り絵」について紹介。今回取り組む塗り絵はゴッホの「星月夜」。誰もが一度は見たことがある名画です。参加者の手元には、それぞれ色鉛筆と「星月夜」を白黒にした用紙が配られていました。早速、全員で塗り絵をスタート!
「まずは水色で青い部分を塗りましょう」と高橋さん。参加者たちは、青を手に取り、全体を塗っていきます。「鉛筆は寝かせて、広く大きく腕を動かしながら」「月や星はまだ色を乗せずに」「木は黄色を使ってみて」など、一つひとつのアドバイスを聞きつつ、みんな無心で手を動かしていきます。色を重ねていくと絵が違う表情になるのも驚き! 塗り絵に没頭する“チル”な時間が始まりました。
「反対色を使って絵に深みを」とプロならではのアドバイスも
参加者が色を塗る中、高橋さんのやわらかな口調で美術や絵画についての想いが語られます。お話を聞きつつ、塗り絵を続けていきます。
ここで、色の三原色のお話を、手作りのパネルを見せながら届けてくれる高橋さん。
パネルには赤、青、黄の丸が描かれており、赤と青を混ぜると紫に、黄色と赤はオレンジに、青と黄色は緑に…とパネルを指差しながら解説していきます。赤の反対色は…とパネルから赤を取ると、残るのは青と黄色。この二つを混ぜた緑が、赤の反対色であると説明します。
高橋さんによると、塗り絵には、反対色を効果的に使うことで、より深い味わいが出るのだそうです。濃い色にしたいときや鮮やかな色をくすませたいときには、反対色を重ねるといいのだとか。また、反対色を隣り合わせに置くと色同士がハレーションを起こしてくっきり見えると、ちょっとしたコツを教えてくれました。
「でも、難しく考えず、どんどん色を重ねましょう」と高橋さん。皆さん再び、塗り絵の世界に戻っていきました。
高橋さんの“ゴッホ愛”を感じながら塗り絵を完成させて
「みなさん、“私は今、ゴッホ”と思って没頭してくださいね」とのお声がけに、参加者たちも楽しい気持ちで色鉛筆を動かしていきます。
そんな中、高橋さんは、ゴッホのエピソードをたくさん教えてくれました。
例えば、「星月夜」に描かれている植物は“糸杉”。これはゴッホにとって大きな存在の植物で、イエスキリストが縛られた木でもあるそう。ゴッホは糸杉を連作でも描いているのだそうです。
また、「星月夜」はゴッホが亡くなる2年前に描かれた作品。この頃、彼は精神的な苦悩が大きく、この絵は精神病院の窓から見た風景だそう。実際には、描かれているような空や糸杉のうねりはなく、シンボル的に描かれたサン=レミ教会の位置も微妙に違っているとか。
さらにゴッホは生きている間に、1枚しか絵が売れなかったけれど、彼を支援し続けたのは弟テオ。その兄弟愛についてもぜひ知ってほしいと。
さまざまなエピソードに、みんなうなずきつつ、ぬりえは最終段階へ。最後に、街の灯りに色を入れて、完成させました。仕上がった作品に、みなさん大満足の様子。
最後に、高橋さんから素敵なメッセージが。「みなさん、普段から抱えているものはいろいろあるでしょうが、たまには何かに没頭する自分の時間を持ってください。そんなとき、塗り絵をしてみてくださいね」。
色を選び、ひたすら手を動かして、浮かび上がる名画。完成したときはスッキリ穏やかな気持ちになれます。ぜひたくさんの人に体験していただきたいです。
まとめ
ご自身でさまざまな作品を手掛けつつも、絵画の指導も熱心に行われている高橋ひとみさん。今回は、色の三原色や作家ゴッホのエピソードも交えて話してくださったので、知識を増やしつつ、塗り絵を楽しむことができました。「作家のことを知ると美術がもっと楽しくなる」と高橋さん。お話を聞いていると、実物の「星月夜」を見に行きたくなってしまいました。その際は、ゴッホについてもっと調べて、存分に楽しみたいと思います。