頭痛や生理痛、胃の不調など、小さな不調を、普段の食生活でメンテナンスできたら素敵だと思いませんか? 薬膳は、漢方医学の考えのもと、健康の維持、不調の改善に役立つ食事法。今回の登壇者の一人、赤堀真澄さんは、国際薬膳学院の学院長を務める、薬膳のプロフェッショナルです。セミナーでは、日常に取り入れやすい薬膳の知恵をお伝えいただきました。
【登壇者プロフィール】赤堀真澄さん
幼い頃からの不調を薬膳で改善したことで、薬膳を自らの道に選ぶ。香港で学んだ本場の中医学を基に、実践しやすい食のセルフケアで体質改善のサポートを届ける。一般社団法人日本食医食美研究会の代表理事や国際薬膳学院の学院長、和学薬膳®協会の理事長も務め、大学などでも指導。
国際中医師、和学薬膳®博士、唎酒師と、数々の資格も保持。
薬膳はスーパーマーケットで買う食材で実践できる!
お花を散りばめた白衣をまとって登場した赤堀さん。関西弁でテンポ良くトークを繰り広げ、会場の空気をパッと明るくしてくれました。
赤堀さん曰く「今日は薬膳のイメージのハードルを下げに来ました! 薬膳はスーパーマーケットで買う食材で十分実践できる、“究極の食材選び法”ですよ」とにっこり。
まずは薬膳の始まりについて解説。薬膳料理は、中国の皇帝の食事管理のため、「食医」が、不老長寿と子孫繁栄を目的として編み出したもので、アンチエイジングや精力アップが根底にあるのだそうです。
10代の頃、皮膚の湿疹で辛い時期を過ごした赤堀さん。25歳で思い切ってステロイド治療を全てやめ、漢方の煎じ薬を飲むことにしました。すると体温が上がり、やる気がUPすることに気づいたとか。そこから冷たい氷入りの飲み物もやめ、しばらくすると、すっかり体質改善したのだそうです。
薬膳の知恵で食べたことをなかったことに!
ここからは、赤堀さんがセミナーで伝えてくれた、薬膳的ライフハック「食べたことをなかったことにする方法」をご紹介します。
●甘いものがやめられないとき
おすすめ食材:ホットレモンティー
甘いデザートに入っている乳脂肪分や砂糖は体を冷やす食材です。乳脂肪のクリームは東洋医学的には“痰湿”と呼ばれ、体内に余分な湿気をためやすいとされています。
ホットレモンティーの茶葉は高発酵の食材で、体を温め、体内の湿気を外に出す力があります。レモンにも体内のゴミを動かす作用が。カフェインを取りたくない場合は、黒豆茶もおすすめです。
●お酒を飲むとき
おすすめ食材
・ 春:しじみ汁
・ 夏:枝豆
・ 秋:柿<特に干し柿>
・ 冬:白菜<鍋物がおすすめ>
お酒に含まれる酒毒(アセドアルデヒド)は血中の水分を押し出し、軽い脱水症状を引き起こすことでむくみや頭痛の原因となります。こうした悪酔い状態を避けるため、季節ごとのおすすめ食材があります。
一番危険なのは、空きっ腹でお酒だけを飲むこと。おつまみと一緒にバランス良く飲みましょう。
●揚げ物を食べるとき
おすすめ食材:大根おろし
揚げ物など油物の取りすぎは、ニキビや湿疹、胃の不調に繋がりやすいです。大根おろしは、胃のなかに膜を張り、油を吸収しづらくし、絡め取って出してくれます。
ぜひ唐揚げなどに添えてみて。大根サラダもおすすめです。
●ラーメンを食べるとき
おすすめ食材:お酢
背脂たっぷり、塩分たっぷりのラーメンはドロドロ血を作る原因に。お酢は、塩分、背脂の吸収を抑え、血のゴミを排出してくれます。ラーメンには“味変”感覚で、途中からお酢をかけて食べましょう。
症状別のおすすめ薬膳食材
次に、悩ましい症状別の薬膳食材をご紹介いただきました。
●お悩み1:血圧が高い
おすすめ食材:黒きくらげ
黒きくらげは血管修復の妙薬とされ、香港の家庭では佃煮として常備されているほど。日本でもスーパーの乾物売り場で購入できます。薬効が高いのは、生より乾物です。
おすすめレシピは「黒きくらげとトマトの卵炒め」。中国の定番お惣菜です。夏はトマト、冬はむき海老を使い、お酒や醤油、みりんで味付けしてどうぞ。
●お悩み2:循環器系疾患(狭心症、虚血性心疾患など)
おすすめ食材:らっきょう
らっきょうは血液をサラサラにする作用があります。おすすめなのは、刻んだらっきょうと納豆、セリを和えたもの。タルタルソースのピクルスの代わりに使うのもおすすめです。
●お悩み3:胃が弱い
おすすめ食材:キャベツ
キャベツの芯は薬効が高く、お鍋やスープをする場合、ベジブロス(野菜の出汁)になります。薄揚げなどと炊くときに、キャベツの芯を入れて煮るとまろやかで美味しいです。便秘の方にもおすすめ!
●お悩み4:頭痛・肩こり
おすすめ食材:葛粉
頭痛や肩こりなど、頭部のトラブルに効くのが葛粉です。葛は葛根湯にも使われています。とろみをつけるメニューの場合、片栗粉ではなく葛粉を使いましょう。
●お悩み5:がん
おすすめ食材:舞茸
がんが身近な病気となっている時代、おすすめなのがきのこ類です。特に、舞茸は、漢方薬として使われるサルノコシカケの仲間で、唯一の食用きのこです。
赤堀さん曰く、「私の師匠は、『がんには月に一度の霊芝より、毎日の舞茸』と言っていました。スーパーで安く買えるのでぜひ試してください」とのことです。
まとめ
さまざまな薬膳的ライフハックを伝えてくれた赤堀さん、最後に、健康に生きるため、不調を放置しないでほしいと語ってくれました。
「健康に体を動かすため、家庭でのセルフケアは必須。慢性疲労、不眠、便秘、動悸や息切れ、咳・痰…。そんな微妙な症状こそ薬膳の出番です」と。そして、「日々、多くの役割を担い、頑張りすぎてしまう方も多いと思います。周囲の方を笑顔にするためにもご自身を大切にしてくださいね」と優しいメッセージを贈ってくれました。
明日から実践できる薬膳的ライフハック。少しずつ暮らしに取り入れていけば、きっと安心で楽しい未来が開けると思えました。