ウェルチル

人生100年を楽しむためのウェルビーイングメディア

画像

FP直伝!よくある失敗に学ぶケース別家計改善術と、家計管理のコツ【第4回ウェルマネー】

家計の健全性は、私たちの幸福感に大きく影響します。経済的な安心感があってこそ人生を楽しむための選択肢が広がり、ウェルビーイングを実現できるからです。

今回は、手間をかけずに家計を改善し、資産形成につなげるコツを紹介します。計画的なお金の管理を通じて、自分らしい豊かな人生を実現するためのヒントをぜひ参考にしてください。

よくある失敗に学ぶ!ケース別家計改善術

最初に、家計管理が上手くいかない、よくあるケース別の改善例を紹介します。

共働き家庭によくあるケース

共働き家庭では収入が二人分になるため、生活が豊かになると思いがちです。しかし実際には収入が多くても、意外とお金が貯まらないケースが少なくありません。

その原因のひとつとしてパートナーの収入を把握していない、あるいは自分の収入をパートナーに知られたくないという状況が挙げられます。お互いの収入をオープンにしないまま生活していると、家計全体の収支を把握できなくなります。

また、「パートナーがお金を貯めているだろう」と思い込み、自分自身は貯蓄を怠ってしまいがちです。結果として、どちらも貯蓄がなく、将来のための資金が不足してしまうという事態に陥るおそれがあるのです。

このような問題を解決するため、以下のような家計管理の方法があります。

    共通口座を作り、収入の一定割合を入金する
    固定費は夫、変動費は妻など、支出項目を分担する
    一方の収入を生活費に、もう一方を貯蓄に回す

どの方法が最適かは、夫婦のライフスタイルや価値観によって異なります。 重要なのは、将来の教育費や住宅購入といった大きな支出に向けた資金計画の共有です。夫婦でよく話し合い、負担の少ない管理方法を決めるとよいでしょう。

専業主婦家庭によくあるケース

専業主婦家庭では、節約のために「妻はお小遣いなし」としているケースも見受けられます。しかし、これは逆効果になりかねません。

ママ友とのランチや買い物の支出は家計簿に記入しづらく、使途不明金として家計を圧迫することにつながります。

健全な家計管理のためには、専業主婦にも適切な金額のお小遣いを設定するほうがよいのです。「毎月1万円」といった一定の金額を決めて、自由に使えるお金を確保します。お小遣いの使い道は細かく管理せず、決められた範囲内であれば好きなように使えるようにすると、ストレスなく家計を管理できるでしょう。

ひとり暮らしによくあるケース

自由な生活を楽しめるひとり暮らしですが、家計管理の面では注意が必要です。特に、食費と交際費がかさみやすく、気がつけばお金がなくなっていた、という経験を持つ人もいるのではないでしょうか。

自炊をあまりしない場合、外食やコンビニ弁当に頼り、食費が膨らみがちです。また、友人との付き合いも増え、交際費がかさんでしまうケースも少なくありません。

このような支出をコントロールするには、食費と交際費を明確に予算化することが効果的です。たとえば、月初めに決めた金額を電子マネーにチャージしておき、その範囲内で支出を管理する方法があります。残高が見えると、自然と節約を意識するようになるでしょう。

また、平日の食事は自炊を基本とし、週末の外食や交際費に予算を振り向けるなど、メリハリをつけた使い方も有効です。自分なりのルールを設定し、それを守っていくと、楽しみも残しながら適切な支出管理が可能になります。

【FP直伝】なるべく手間をかけずに家計管理を実践するコツ

最後に、FPである筆者が多くの人におすすめしている家計管理のコツを紹介します。

まずは生活費の半年分の予備資金を準備

家計管理の第一歩として不測の事態にも対応できるよう、生活費の半年分の予備資金を確保しましょう。病気やケガ、失業など、人生には予期せぬ出来事がつきものです。このような事態に備え、「緊急予備資金」「生活防衛資金」と呼ばれる予備資金を準備しておくとよいとされています。

たとえば月の生活費が20万円なら、半年分で120万円が予備資金の目安となります。この資金は、生活費とは別の専用口座で管理し、いつでも引き出せる預貯金の形で持っておくのがベストです。

家計の見直しは固定費から

家計を見直す場合、変動費より固定費を優先しましょう。固定費と変動費にあたる主な費目は、以下のとおりです。
固定費の見直しは一度してしまえば、その後は意識的に節約を心がけなくても効果が持続する点がメリットです。食費の節約ように毎日意識する必要がなく、家計管理をラクにできます。

具体的には、保険の見直しや使っていないサブスクリプションサービスの解約などを検討してみましょう。

先取り貯蓄で無理なく確実に資産形成

着実な資産形成のために取り入れたいのが、「先取り貯蓄」です。先取り貯蓄とは、収入からあらかじめ決めておいた金額を貯蓄や投資に回し、残った金額で生活をやりくりする方法です。

「生活費の残りを貯蓄に回そう」と考えても、なかなか思うようにお金が貯まらないのではないでしょうか。人は使えるお金があると、つい使いきってしまう傾向があるからです。

先取り貯蓄を確実に実行するには、給与天引きの財形貯蓄や自動積立定期預金など、自動的に積み立てられる仕組みの活用がおすすめです。

先取り貯蓄のメリットは貯蓄後の残額で生活するため、使いすぎを自然と防げる点です。また、先取り貯蓄の後のお金の使い道は比較的自由に決められ、家計管理もラクになります。

貯蓄の割合の決め方

先取り貯蓄を実践するには、収入に対する貯蓄の割合を決める必要があります。

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)」によると、手取り収入からの貯蓄割合の平均は、二人以上世帯で11%、単身世帯で13%です。貯蓄しない世帯も30%から40%もあり、意識して貯蓄する習慣の必要性が浮かび上がります。

一般的に、収入が多いほど貯蓄に回せる割合も大きくなります。余裕がある場合は手取り収入の30%以上を貯蓄できますが、まずは20%以上を目安に設定しましょう。収入が少ない場合でも、最低10%は貯蓄に回したいところです。

ライフステージによっても貯蓄割合は変化します。独身や子どものいない共働き世帯では30%〜40%の貯蓄が可能ですが、子育て世代は10%〜20%程度に抑えるなど、柔軟に調整しましょう。

不定期な支出を管理する方法

家計管理では毎月の支出の管理だけでなく、不定期な支出に備えることも必要です。不定期な支出とは、たまに発生する金額が大きめの費用です。例として、以下のようなものが挙げられます。

    車検代
    自動車税
    固定資産税
    年末年始の帰省費用
    学年始めの子どもの教材費
    家具や家電の買い替え費用
    旅行費用
    結婚式のご祝儀

これらの支出は、世帯によっては年間100万円以上になるケースもあります。そのため、しっかりと準備しておかないと、貯蓄を取り崩すことになりかねません。

不定期な支出を管理するには、年間の総額を見積もり、「特別費」のような予算枠の設定をおすすめします。そして、特別費の金額を12で割った額を毎月、専用の口座に貯めていきましょう。実際の支出が発生した際には、この口座から費用を支払います。

特別費を予算化する目的は、長期の資産形成のための貯蓄を取り崩さないようにするためです。そのため、特別費の予算は、あまり余裕を持たせないほうがよいでしょう。

ローンを整理する考え方

住宅ローンや教育ローン以外の高金利のローンは、可能なかぎり早期の返済を意識しましょう。ただし、長期的な資産形成も重要であるため、返済と貯蓄とのバランスを考える必要があります。

ひとつの目安として、借入額が少額(年収の3分の1以下)の場合は、貯蓄よりも返済を優先し、短期集中で完済を目指します。

一方、借入額が大きい場合は、返済と貯蓄を並行するとよいでしょう。たとえば、手取りから生活費を差し引いたお金が5万円ある場合に、返済に4万円、貯蓄を1万円といった振り分けが考えられます。

また、複数の借り入れがある場合は、利息の高いものから優先的に返済しましょう。

まとめ:家計を黒字化して資産形成につなげましょう

毎月の収支はきちんと管理しないと、お金は貯まりません。しかし、家計管理は決して難しくはなく、工夫次第であまり手間をかけなくても黒字が続けられて、資産形成ができるようになります。

家計の安定はウェルビーイングの実現にもつながります。この記事の内容を実践し、充実した人生の第一歩にしてみてはいかがでしょうか。

執筆:松田 聡子
明治大学法学部卒。ITエンジニア、国内生保法人営業を経て2009年よりFPとして独立。企業型確定拠出年金、FP受験講座講師、個人・法人への相談などに加え、2020年より金融ライターとして執筆を開始。保有資格はCFP®、DCアドバイザー、証券外務員二種。