お笑いコンビ「アルコ&ピース」平子さんに、心地よく幸せな人生を歩むための哲学を教えていただく連載企画『アルピー平子のロマンチック哲学』。第5回目のテーマは、「平子流・仕事術」です。
お笑い芸人としてはもちろん、俳優や作家としても、マルチな才能を発揮している平子さん。お仕事に向き合うときに何を大切にしているのか、気になる人も多いはず。ずっと大切にしているという、尊敬する先輩にかけてもらった言葉の数々も、教えてくれました。
平子祐希:
1978年12月4日、福島県いわき市出身。お笑いコンビ「アルコ&ピース」のボケ担当。2012年「THE MANZAI」で3位入賞を飾り、バラエティ番組やラジオMC、俳優業でも活躍。相方は酒井健太さん。類稀なる愛妻家としても知られており、2020年には妻・真由美さんへの愛や結婚観を綴った自身初の著書『今日も嫁を口説こうか』(扶桑社)を出版している。
“それっぽさ”が武器!平子流・巧みな印象操作術
仕事術と言っていいのかわかりませんが、僕って“それっぽい雰囲気”を出すのが上手いんですよ(笑)。漫才のネタも書く文章も、何か新しいアイデアが宿っているわけでもないのに、いかにもクリエイティビティに富んだ内容のように見せるのが得意なんです。よく見てみると、実は薄っぺらい内容ばかりだったりするんですよね。
例えば何かのインタビューを受けるときも、早口で声が高い人よりも、ゆったりと低い声で話す人のほうが、受け手の印象が全然違うと思うんです。内容が伴っていないのに、どこか説得力が生まれるというか。「何言ってるか分からないけれど、もしかしたらすごく深いことを話してるのかも」と思わせることが結構大事だと思うんですよ。
種明かしみたいになってしまいますけど、この“それっぽさ”というのは、僕の強みになっている気がします。もはや、ある種の詐欺行為ですね(笑)。
支えになった有吉さんの言葉。先輩から後輩へ受け継がれるもの
尊敬する先輩はたくさんいますが、中でも有吉(弘行)さんは、僕にとって大きな存在です。キツい仕事を前にしたとき、以前の僕は真正面からダメージを喰らって、気を落としてばかりだった。でもしんどかったとき、有吉さんからかけてもらった言葉に、ものすごく救われたんです。「こっから先、嫌な思いもするだろうし、対人関係でストレスを抱えることもあるかもしれないけど、上っ面ではニコニコして、心の中で舌出してりゃ済むからな」って言ってもらえて、なんだかすごく気が楽になったんですよ。
この仕事、自分には合わないんじゃないかって落ち込むことも何度もありました。そんなときも「俺もこんなことあったんだよ」って、ご自身の失敗談を隠すことなく話して寄り添ってくれて。有吉さんみたいなすごい人でもそんな過去があったんだと思うと、僕も等身大以上に自分を大きく見せようとしなくていいんだなって、心底安心したんですよね。
もう一つ、有吉さんの言葉で、大切にしているものがあります。「一つひとつの仕事をていねいにやるんだよ。誰かがどこかで必ず見てるから」という言葉なんですけど。ウッチャンナンチャンさんがMCをされてるネタ番組で、このことを話したんです。収録が終わってから知ったんですが、元々は有吉さんが、内村(光良)さんからかけてもらった言葉だったらしいんですよ。かつてご自身が先輩に贈られた言葉を実践して、またその言葉を後輩に贈る。その生き様のかっこよさにシビれましたし、僕もこの言葉を引き継いでいかなきゃと、胸に刻みました。
こんな僕でも、後輩から仕事の悩みを聞くことがあるんです。そのときは、「あの現場、難しいよな。でも俺は、お前のこと面白いと思ってるよ」と伝えるようにしています。自信なさそうにしている人より、自信満々な人の言葉のほうが、笑顔になれるじゃないですか。なるべく背中を押せるような言葉を添えるようにしています。
人間性の磁力こそ、失敗すらも成功に変える“無敵の人”の共通点
未だにうまく行かない現場はあります。むしろうまくいかないと感じることのほうが多い。でもそんなときこそ、失敗や失策も全部ひっくり返して、成功につなげられる人は無敵だと思います。僕ら芸人でいうと、スベることすら笑いに変えるような人ですね。
そういう力がある人に共通しているのは、結局人間性なんじゃないかな。その人の周りはいつも笑顔で溢れていて、不思議と人を惹きつける力を持っている。人が集まるからこそ、いつも誰かがサポートしてくれるし、支えあいの連鎖が自然発生している。天性の才能に近いと思うんですけど、そんな人はどの仕事をしていても最強なんだろうな、と思いますね。