夢を語り合った街、悔し涙を流した街…。人生を語るうえで、思い出と『街』は切っても切れない関係にあります。
さらに、行きつけのお店や自分だけが知っているリラックスできる場所など、心の健康を支える≒ウェルビーイングな存在なのが『街』です。
この企画では、街をこよなく愛し、濃厚な時間を過ごしてきた芸人にフォーカスを当て、普段見ることができない素顔に迫ります。#3は、#1、#2に続いて人気お笑い芸人・友近さんに街についてインタビュー。上京して住んだ3つの街と、仕事の変化について聞きました。
友近:
愛媛県出身。NSC卒業後は NHK新⼈演芸⼤賞で⼤賞、ABC お笑い新⼈グランプリで優秀新⼈賞を受賞するなど、お笑い芸人として活動する一方、女優として舞台、テレビドラマ、映画などに多数出演。2019年、『嘘八百』(18)で第28回日本映画批評家大賞助演女優賞を受賞。
また、友近サスペンス劇場をYouTube で公開し、第15回ロケーションジャパン⼤賞 審査員特別賞受賞。歌手「水谷千重子」や中高年プロアルバイター「西尾一男」としても活躍中。8月より明治座・博多座・新歌舞伎座で4度目の水谷千重子50周年座長公演を開催。
「オールザッツ漫才」で優勝。7年後に上京
--2010年に上京されていますが、きっかけはなんだったんですか。
友近:
2003年に関西テレビの「オールザッツ漫才」というコンテストで優勝したことかも。これは関西の若手芸人の登竜門とも言われる大きなコンテストで、優勝すると一気に注目されるんです。
--そこから一気に露出が増えていったんですね。
友近:
その頃、「オールザッツ漫才」で若手を発掘するコーナーがあり、そこで優勝して、それでTBSさんから声がかかって、東京で3本レギュラー番組が決まりました。注目されるとこういうふうに声がかかるんだ。レギュラーが決まっていくんだと実感した時期でした。
--2003年の「オールザッツ漫才」優勝から2010年の上京まで7年間ありますが、この間はどのような生活を?
友近:
大阪を拠点にしながら、東京の仕事に通ってました。大阪でもレギュラー番組があったので、7年間は新幹線での往復生活でしたね。でも、だんだん東京の仕事が増えて自然な流れで「さすがに東京行ったほうがいいな」と思ったのが2010年です。
引越しが大変で10年住んだ千駄ヶ谷
--最初はどこに住まれたんですか。
友近:
千駄ヶ谷です。仕事で中尾彬さんとご一緒したときに、「どこがいいと思いますか」と聞いてみたんです。そしたら、「千駄ヶ谷は龍の通る道だからすごくいいよ。特に鳩森八幡神社から出ている通りがいい」と教えていただいて。予算的にはちょっと「いいとこ」すぎる気もしたんですが、引越しって手続きが大変なので頻繁に引っ越しもできないので長く住むならちょっと背伸びしてもいいのかなと。
--引越しが嫌いなんですか?
友近:
とにかく手続きが面倒くさくて(笑)。住民票とかガスとか電気とか変えなあかんし。芸能人って結構引越しする人多いけど、みんな誰かに代わりにやってもらってるんかな??(笑)。あれを自分がすると思うと嫌すぎて。だから千駄ヶ谷にも10年は住んだんじゃないかな。
--千駄ヶ谷ではどんなふうに過ごされていましたか。
友近:
ネタも家でつくってたし、本当に出歩かなかったので、近いけど原宿もほとんど行ったことなかったですね。仕事が忙しくて余裕がなくて、一番ストレスが多かった時期だったと思います。
--ストレスの解消法は? 芸人同士で出かけてストレス発散していたんでしょうか。
友近:
その頃レギュラー番組を一緒にやってたハリセンボンとか、森三中の大島(美幸)さんとすでに仲良かったので、ごはんに行ってたりはしてたかな。場所は鍋屋さんが多かったですね。私もそうですが、女芸人は結構鍋好きなんです。いっぱい食べられるから!
--夏も鍋?
友近:
はい。とにかくたくさん食べたい(笑)。身体が資本の仕事ですからね。
--友近さんが住む場所を選ぶ基準はなんですか。
友近:
みんな結構にぎやかな場所に住むんですけど、私は移動が多いので、新幹線・飛行場に近い街っていうのはいつも決めています。
--お気に入りの場所はありますか?
友近:
増上寺や大宮八幡神社など大きな神社・お寺・公園が好きなので、たまにウォーキングはしてます。以前は加圧トレーニングに通ってたんですけど、最近忙しくて行けてないので、せめてもの運動。
--よく行かれるお店は。
友近:
『Le Pain Quotidien(ル・パン・コティディアン)』というオープンカフェは、都会にあるのに自然がいっぱいで素敵です。東京タワーが真ん前にあるので、テラス席によく座ります。食べるのはサラダが多いかな。ボリュームがあって、たくさん食べてもヘルシーで罪悪感が少ないから。
自分で営業して、自分で仕事を選べるように
--大阪から上京して15年目になりますが、どんな変化がありましたか?
友近:
この5、6年で、自分が思い描いたことが実現できるようになりました。会社とエージェント契約を組んだ頃ですね。以前は会社が仕事を決め私に振り分ける形でしたが、今は私が窓口になって直接やりとりし、吉本興業にはサポートをしてもらう形になったんです。自分で営業したり、仕事を選べるようになりました。
--ご自身でも営業をかけることがあるんですね。
友近:
自分で電話して、「この番組、あのイベントに出演させてもらえませんか」という交渉もします。驚かれますが、喜んでいただける方が多くてうれしいですね。あと、代理店と会場の関係性とか仕組みが分かってきて、「こうお願いしたらこうやってくれるかも」みたいなことが分かってきました。
--仕事への向き合い方が大きく変わったということでしょうか。
友近:
変わりました。当たり前だけど、企業は所属タレントに価値を持たさないといけないし、利益にもならないとあかんし。でも私はお金に無頓着というか、「ギャラがこれくらいだからやろう」とかあまりなくて。「これやりたいから、やったほうがいい」という感じ。それが言えるので楽ですね。特にテレビは、ギャラを出演後に知ることもあるぐらいです。
第四回は、「旅好き」友近さんが、仕事や旅行で訪れる街についてについて語ります!