「人生100年時代に読みたい本」をテーマに、小説だけでなく詩・短歌・エッセイなどの作品を幅広く紹介する文芸ウェルチルの企画がスタート。皆さんのウェルビーイングな日々を後押しする、「なんだか思い出すと元気になれる」そんな素敵な作品を、書き手や作り手の想いとともに紹介していきたいと思います。
記念すべき第1回は、11/27に小学館から刊行された新文芸誌「GOAT」をご紹介。刊行のきっかけや、「GOAT」ならではの魅力について、三橋薫編集長にインタビューしました。
紙のページをめくるからこその楽しみ。作品との偶然の出会いを楽しんでほしい
ーーそうすると「小説はハードルが高いな」と感じている方々が主なターゲット層になるのでしょうか?
はい、忙しくて読書から遠ざかってしまっていたり、少しハードルが高いなと感じている方にもぜひ手に取って頂きたいなと思っています。作家さんのラインナップを見ていただくとわかるのですが、普段から小説をよく読むという文学好きの方にも、十分満足していただけるような内容になっています。普段から本を読む方にも、読まない方にも、広く楽しんでいただけるように、間口の広い文芸誌にしていきたいと思っています。
ーー確かに、作家さんのラインナップが本当に豊富ですね。ここに、「GOAT」の魅力があるのでしょうか?
「GOAT」を刊行するにあたって、ジャンルレスな文芸誌でありたいというのは一貫して考えていました。文芸誌は、「純文学」や「ミステリー」など、ジャンルがきっちり分けられている物が多いんです。この作品は、ミステリー誌にはそぐわないよね、というような考え方もあって。
「GOAT」では、そういった暗黙のルールは無しにして、私たち編集部員が、心から自信を持って推せる、今一番読んでほしいと思う作家さんや作品を掲載していこうと考えています。面白ければ何でもOKで、ジャンルレスにやっていきたいと思います。今回は、チョン・セランさんやパク・ソルメさんなど、韓国の作家さんの作品も積極的に収録していて。ジャンルだけでなく、国境も越えて、ボーダーレスにやろうと思っています。
Webの記事や雑誌だと、自分の読みたいものをピンポイントで読むと思うのですが、紙だと何となくページをめくっていくうちに、「あれ、この作家さん、知らないけどすごく面白い!」というような偶然の出会いがあると思うんです。ぜひ、「GOAT」でこれまで知らなかった作家さんや、読んだことのないジャンルの小説でも面白いと思えるものに出会っていただけたらと思います
環境にも人にも優しい文芸誌に。令和の時代に刊行するからこそのサステナブルとバリアフリー
ーー今回の「GOAT」には、創刊号ということで何か特別な仕掛けや工夫はありますか?
今回、この時代に紙の文芸誌を刊行するということで、資材にはすごくこだわっています。大王製紙さんとコラボして、製造残渣という工場で物を作った後に残って廃棄する部分を使って作られた紙を一部のページで使用しています。「愛と再生」というテーマとも絡めているんです。
あとは、インクの色もピンクに変えたり、細かいところで遊びを入れています。本文用紙に色上質という色のついた紙を使って、ピンクとブルーのグラデーションにしたのも「可愛い!」ととても好評です。
ーー環境に優しいというのも大きな魅力なのですね。加えて、「読書バリアフリーをめぐる旅」という企画も組まれていますが、人にも優しい工夫があるのでしょうか?
今回、『ハンチバック』で芥川賞を受賞された市川沙央さんにも書いていただいているのですが、市川さんが訴えていらっしゃる読書バリアフリーはまだまだ進んでおらず、私達も全力で取り組んでいきたいと考えています。
「GOAT」では、読書をする上で障壁のある方々にも小説を楽しんでいただけるように、電子書籍の刊行とともに、読みやすいフォーマットに変換したり、点字に変換することもできるよう、テキストデータの提供も行っています。
ーーありがとうございます。色々な点から、これまでにない「新しい文芸誌」だと言えますね。今後の展望についてはいかがでしょうか?
第2号は5月頃の発売を予定していますが、次号以降も、編集部の有志の本気を詰め込んだものにしたいと思っています(笑)。読者の方々が飽きないようにというのももちろんですが、私達作り手も飽きないようにしていきたいですね。やっていくうちに、型が決まってきちゃう”マンネリ化”は往々にして起こることなので、どんどん新しいことをやっていかないと。私達自身がワクワクできるものを作り続けていきたいです。
あとは、読書って基本的にはひとりでするものですが、個人的なところで完結するのではなく、「GOAT」を読むことをきっかけに交流が生まれるようなイベントなども企画していきたいと思っています。紙の刊行物が減っている時代ではありますが、紙だからこその魅力や意義を発信し続けていきたいと思います。
小説は「楽しむ」ことが第一。ボーダーレスな価値観でウェルビーイングな日々を
なかなかこれまで本に触れたことがなかったという方にも、読書を愛する方にも、ぜひ手に取ってほしい新文芸誌「GOAT」。ジャンルにも国境にも囚われない、自由な作品の数々は私たちの日々に彩りを与えてくれること間違いなし。「文芸ウェルチル」の企画も、「GOAT」と同じ創刊号。さまざまな垣根を超えて、読者の皆さんのウェルビーイングに貢献できる記事を発信していきたいと思います。
この記事で紹介した本「GOAT」
2024年11月27日から好評発売中!
発行:小学館
定価:510円(10%税込)
HPはこちら
紙を愛してやまない《ヤギ》にちなんで名づけた、《Greatest Of All Time(=かつてない)》文芸誌が誕生!ジャンルや国境を越えて豪華執筆陣が集結しています。創刊号は「GOAT」の名前にちなんで、510円(税込)。読者プレゼントとして、野﨑まど×GOATコラボの「ゴートくんブックエンド」も!