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vol.11 家でも学校でもないもう一つの居場所。子どもたちが集まるHALE ONO(ハレ オノ)子ども食堂 【誰かと私にちょっといいいいこと】

豊中市にあるHALE ONO(ハレ オノ)子ども食堂は、子どもたちに無償で食事や居場所を提供するNPO法人です。
2022年にスタートし、現在、訪れる子どもは年間4,500人以上。子どもたちにとってかけがえのない居場所となっているHALE ONO子ども食堂を立ち上げたリチャードご夫婦に、活動の経緯やその想いを伺いました。
HALE ONO  豊中 子ども食堂 

子どもの困窮を救いたい。その想いで始めたHALE ONO子ども食堂

――HALE ONO子ども食堂を設立した経緯を教えてください。

コロナ禍で、それまで生業としていたツアーガイドの仕事がすべてなくなってしまったんです。引っ越しもしなければならず、本当に大変な時期を過ごしていました。

引っ越し後、新しい家の裏に広い空き地があることが分かりました。BBQが大好きな私は、「ここを借りられたら、いつでもBBQができるし、植物も育てられる」とひとめぼれ。持ち主の方に相談して、借りることにしたんです。

そんなある日、新聞で「日本では7人に1人の子どもが貧困状態にある」という記事を読みました。この日本に、食べるものに困っている子どもがこんなにもいる。その現実に、大きな衝撃を受けたことを、今でもよく覚えています。

自分に何かできることはないだろうか。
この広い空き地を、子どもたちのために活用する方法はないだろうか。

そう考えたことが、子ども食堂を始めるきっかけとなりました。
当時はコロナ禍だったので、「密」を避けることが求められていましたが、ここは半屋外で、風が通り、開放感がある。それならば安心して子どもたちを迎えられるのではないかと思ったんです。

現在はハンバーガーを提供していますが、当時は飲食業の許可がなかったので、保健所にも相談をしてインスタントラーメンを提供することにしました。

想像以上に多かった「居場所」を求める子どもたち

――現在は、何人ぐらいの子どもたちが利用しているのでしょうか。

今では毎月、延べ400人ぐらいの子どもが来ています。2024年は年間約4,300人、2025年は約4,500人。利用する子どもの数は、年々増えています。

正直なところ、ここまで大きな活動になるとは思ってもいませんでしたが、居場所を求めている子や、つながりを必要としている子が増えているということなのでしょう。
HALE ONO  豊中 子ども食堂 
――そんなに多くの子どもが利用しているとは、びっくりしました!

「おなかが空いている」というよりも、居場所を求めている子が多いんですね。子どもたちに話を聞いてみると、公園以外に集まる場所がないとのこと。私たちが子どもの頃と比べると、子どもを取り巻く環境は、本当に複雑になっているのです。

友達と集まって他愛もない話をしたり、一緒に遊ぶ。そんな当たり前の時間を過ごせる場所は、子どもにとって重要です。HALE ONO子ども食堂を利用する子たちも、「ごはんを食べる場所」というよりも、「友達と会う場所」と考えている子が多いようです。

うちに来る子のほとんどが小学生の女の子なので、気軽に立ち寄れるよう、カフェのような雰囲気にしています。お菓子を食べたり食事をしたりしながら、楽しく話している様子を私たち大人はそっと見守っているのですが、子どもが必要とすれば、話を聞いたり相談にのったりすることもあるんです。
――やはり、共働き家庭のお子さんが多いのでしょうか。

そうですね、共働き家庭はもちろん多いですし、自分のことで忙しく、家を空ける時間が長い保護者の方も少なくありません。「家に帰っても親はいない」という子もいますし、家族そろって食卓を囲む機会が少ないという話もよく聞きます。

「学童」という選択肢もありますが、学童は定員があり、誰でも利用できるわけではありませんし、利用料も必要です。

その点、HALE ONO子ども食堂は完全無償で食べ物や飲み物を提供していますし、いつでも誰でも来られる環境が整っています。月・水・金と週3回ではありますが、毎回来てくれる子も多く、求められているなと感じます。

私たちにできることは決して多くありませんが、1人でも多くの子どもが孤独や孤食から離れ、安心して過ごせる場所を作ることができれば嬉しいですね。
――キャンプのような楽しい雰囲気で、女の子が集まりやすい雰囲気とあれば、子どもの中でも話題になるでしょう。

開放的で、居心地が良いのだろうと思います。コロナの時には集まる場所が限られていましたが、HALE ONO子ども食堂はもともとオープンな場所だったので、コロナ以前と変わらずに過ごせたことは、メンタル的にも良かったのではないでしょうか。
HALE ONO  豊中 子ども食堂 

HALE ONO 子ども食堂が「無料」にこだわる理由

――HALE ONO子ども食堂には賛同者もたくさんいらっしゃるようですね。

以前はボランティアの方が5名ぐらいいて、運営をお手伝いしてくれていました。今も、お隣に住む元音楽教師の方がお手伝いしてくれています。

食事も無償で提供しているため、当初は1年続くだろうかという心配もありましたが、オープンから4年が経ち、子どもたちもここに通うことが日常生活の一部になってきています。家でも学校でもない「サードプレイス」として機能している印象です。
――すべての子どもたちに無償で提供するというのは、大変なことですよね。

最初は周りの人から「無料では続かない」と言われましたが、それでも無料にこだわったのは、「お金がないから行けない」という子どもを1人も作りたくなかったからです。
100円でも、払えない子がいるのです。

2022年3月にスタートし、同年7月には週末限定でキッチンカーでのハンバーガー販売をはじめました。当初は活動に共感してくださる個人の方から寄付をいただいたり、ご縁がつながってインターコンチネンタル大阪様からカップラーメンをご寄付いただけるようになったり、多くの方に支えていただいています。

NPO法人を設立してからは助成金を受けられるようになったり、テレビや口コミのおかげで、キッチンカーの販売が軌道に乗ってきたりして、できることが増えてきました。キッチンカー収益の一部も、子ども食堂の運営費に充てています。

子どもたちの間で差別が生まれないように、誰でも安心してこられる場所であるように、これからも無料を貫いていきたいと思います。
――活動を始められた当初は、ご自身も大変な状況だったのですよね。

しんどいからこそ、「みんなで頑張ろう」という雰囲気がありました。先のことを考えすぎるより、「今、自分たちにできることをやろう」と。
どれだけ忙しくても、この活動だけは続けていこうと思っています。

最近は、子どもたちに助けてもらうこともあるんですよ。年上の子が年下の子の面倒を見てくれるようになったり、『今日は何か手伝うことある?』と30分も早く来てくれたり。

私たち2人だけでは手が足りないこともあるので、本当に助かっています。そしてなにより、「自分も誰かの役に立ちたい」と思い、声をかけてくれること自体が嬉しいことですよね。
HALE ONO  豊中 子ども食堂  リチャード

1人でも多くの「信じられる大人」に出会ってほしい

――周りの大人が声をかける、手を差しのべるということが必要なのだろうと感じました。

「7人に1人がおなかをすかせている」と言いましたが、それもアンケート上の情報で、実際にはもっと多いのかもしれません。

先日、初めて子ども食堂に来た子どもに『ハンバーガー、食べる?』と声をかけました。するとその子は、『…無料ですか?』と聞いてきたのです。

『もちろん!でもCan I have a cheese burger?と聞かないとだめだよ!』と言ってハンバーガーを手渡すと、今にも涙がこぼれそうな顔でほおばってくれました。中には『お母さんにも1つ持って帰ってあげてもいい?』と聞いてくる子もいます。

日本人は幼いころから「我慢すること」を教えられます。だから、本当に困っていても、「助けて」と言えない子が多いのですね。
HALE ONO  豊中 子ども食堂  リチャード
――HALE ONO子ども食堂には、今の日本に欠けている「つながり」を感じます。

子どもたちにとって、安心できる居場所や大人の存在は本当に大切なものです。しかし、子どもたちの話を聞いていると、「居場所がない」という言葉をよく耳にします。

保護者がほとんど家に帰ってこないから彼氏の家で寝泊まりしていたり、家のガスも電気も止まってしまっていたり。児童相談所に行けば相談にのってくれるはずですが、お母さんが好きだから、相談には行きたくない。そんな話を聞くことも珍しくありません。

10代、20代の子どもたちが関わる犯罪も、内容がエスカレートしてきているように感じます。人の気持ちを読み取る力やコミュニケーション力が足りなかったり、人を信じることができなかったりするのかもしれません。

HALE ONO子ども食堂でも、時には気持ちが高ぶってしまう子どももいます。子どもたちのコミュニケーション力を養うためにも、「なぜこれがダメなのか」ということを丁寧に説明し、理解してもらうように努めています。また、「挨拶をする」「ごめん・ありがとうをきちんと言う」「悪い言葉は使わない」など、基本的なルールも大切にしています。
HALE ONO  豊中 子ども食堂  リチャード
――子どもにとって「安心」できる場所や人とのつながりが大切ということですね。

私たちができることは、場所や食事を提供することぐらいです。誰かと一緒に食事をしたり、何気ない会話を楽しんだり、そういう日々の積み重ねが「自分を気にかけてくれる大人がいる」という安心感につながればいいですよね。

血のつながった家族ではないけれど、自分のことを気にしてくれる大人がいるということを知っておいてほしい。小学生ぐらいの年齢からそのような体験ができれば、大人になって苦しい時に「誰かを頼っていいんだ」と思えたり、「これはやってはいけないな」とブレーキをかけられたりするのではという思いもあり、この活動を続けています。

HALE ONO  豊中 子ども食堂  リチャード
――今後取り組みたいことは?

特別に新しいことを始めたいというよりは、今の活動を大切に続けていきたいですね。
ずっと通ってくれる子どもたちに対して、自分たちが何をしてあげられるのか。それを考えながら、より良いコミュニティを育てていきたいと思っています。

継続は力なり。私たちを必要としている子どもが1人でもいる限り、この場所を守っていこうと思います。
◆HALE ONO子ども食堂
Instagram

◆寄付について
・お菓子、テントなどの物資
・施設のメンテナンスに関わるボランティア
2026年7月現在は、上記をご寄付いただける方を募っています。

◆寄付の方法
Instagramのメッセージよりご連絡をおねがいします
取材を終えて

子ども食堂というと、「地域の子どもに食事を提供する場所」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかしHALE ONO子ども食堂で大切にしているのは、おなかを満たすだけではなく、友達と笑い合うことや自分を気にかけてくれる大人がいると感じられることだと、リチャードさんは言います。

7人に1人の子どもが困窮しているという現実は、にわかには信じがたいものですが、その現実を受け止めて、少しでも良い方向に改善したいものです。
登下校中の子どもに声をかけたり、地域の行事に参加して子どもと関わってみたりするなど、「自分にできること」は意外と身近に見つかるのかもしれません。

今は運営や施設のメンテナンスを手伝ってくれるボランティアの方が圧倒的に足りていないというお話でした。
また、子どもたちが楽しくお話しする憩いの場として活用してくれていることから、お菓子を提供してあげたいと考えているそうです。まだまだ物資もマンパワーも足りていない状況。

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次回もお楽しみに。