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品川で始める「プロトタイプする暮らし」-コワーキング併設のコクヨ賃貸住宅「THE CAMPUS FLATS TOGOSHI」

文具・オフィス家具大手のコクヨが、2023年、東京・戸越にオープンした賃貸住宅「THE CAMPUS FLATS TOGOSHI」。「プロトタイプする暮らし」をテーマに、住みながら「いつかやってみたかったこと」に挑戦できる、新しい形のコワーキング機能を備えた空間です。企画の背景やコンセプトについて、担当者(伊藤様・佐藤様)にお話を伺いました。
THE CAMPUS FLATS TOGOSHI

「このままでいいのかな?」に応える。プロトタイプする暮らしとは

伊藤大樹

コクヨ(株) グローバルワークプレイス事業本部 アセットプランニンググループ 伊藤大樹さん

――「THE CAMPUS FLATS TOGOSHI」を始めようと思われた背景について教えていただけますか?

伊藤:大きなきっかけはコロナ禍ですね。コクヨはこれまで「働く」側面を支援してきましたが、在宅勤務などが進む中で「働く」と「暮らす」の境界線が曖昧になってきていると感じています。そこで、オフィス以外でも働く人を支援するという考えから、コリビング事業を開始しました。

――コリビング、というとシェアオフィスやシェアハウスのようなものでしょうか?

伊藤:市場としてはシェアハウスに近いですね。しかし私たちは働き方だけでなく、キャリアの選択も自由になってきている中で、普段の生活の中で新しい機会に触れることがその人の人生の選択肢を広げる支援になるのではと考えています。

――なぜビジネスの場を貸すコワーキングに「入居」という機能を組み合わせたのでしょうか?

伊藤:人生100年時代と言われる中で、様々な選択肢がありながらも、なかなか一歩を踏み出せない方が多いのではないかと考えています。住まいという日常の中で、気軽に新しいことに触れたり試したりできる機会を提供したかったのです。

また、この建物が元々コクヨの単身赴任者向け社員寮で、住環境の設備が整っていたという実務的な側面もあります。その資源を活かし、リノベーションして「住む」機能を残しました。
周辺には商店街があり、個人で商いをされている方も多いので、地域の方々も含めて応援してくれるような土壌があるのもこの場所の魅力だと感じています。
THE CAMPUS FLATS TOGOSHI

住居部分

入居者の方からは「多様な人がいて刺激を受けた」「一緒に何かに取り組むことで前向きな気持ちになれた」といった感想をいただいています。

この施設は、必ずしも独立や起業を目指す方だけを対象としているわけではありません。「このままの暮らしでいいんだっけ?」といった素朴な疑問を持つ方に、いろいろな機会に触れていただくことを重視しています。中には「これといった興味関心もいまはないけれど、何か新しいチャレンジの機会に触れたくて来ました」という方もいらっしゃいます。
THE CAMPUS FLATS TOGOSHI

コクヨ(株) グローバルワークプレイス事業本部 アセットプランニンググループ 佐藤一樹さん

佐藤:もちろん経営者やフリーランスの方もいらっしゃいますが、そういう方々ばかりではなく、新しいことに前向きな方が多いですね。シェアリビングのような場所で日常的に顔を合わせるので、自然と交流が生まれ、「自分も何かやってみよう」という気持ちになるようです。「新しく料理を始めました」とか「みんなでジムに通い始めました」とか、皆さん自分なりに新しいことを見つけて楽しまれています。

――そういう前向きな気持ちが自然と生まれてくる場所なんですね。

住居だけじゃない!ビジネスも試せる「スタジオ」という名のコワーキング機能

――「スタジオ」について詳しくお聞かせください。入居者はどのように利用できるのでしょうか?コワーキングオフィスのような使い方も可能ですか?

伊藤:「スタジオ」は入居者の皆さんが追加料金なしで自由に使える共用スペースです。施設にはコミュニティマネージャーを1名配置し、入居者の相談に乗ったり、活動を後押ししたりしています。スタジオには飲食店の営業許可を取得したスナック・バーのようなキッチン付きスペースがあり、コミュニティマネージャーが「1日だけお店をやってみませんか?」と促すなど、最初の一歩を踏み出すきっかけを提供しています。
THE CAMPUS FLATS TOGOSHI

スナック・バーのような空間も

その他にもIHコンロを完備したキッチンや壁面ミラーと吹き抜け空間が特徴のフィットネススペースも利用可能で、料理教室を開いたり、パーソナルトレーニングを実施したりと、ご自身のアイデアを試す場として活用していただけます。東京の特に品川エリアに近いこの場所は、スモールビジネスのプロトタイプを試すには良い環境だと思います。
THE CAMPUS FLATS TOGOSHI
――事業を本格的に始めるというよりは、もう少し手前の段階の方が多いのでしょうか?

佐藤:そうですね。「最近副業が流行っているし、自分でも何かやってみたい」といった、事業を始める一歩手前の方が比較的多いかもしれません。ただ、一人で何かを始めるのはハードルが高いですよね。そういう時にコミュニティマネージャーや他の入居者から「一緒にやりましょう」と声をかけてもらえると始めやすくなると思います。私たちは0から1への一歩を応援したいと考えています。

心地よい距離感のコミュニティ。「シェアオフィス」とも違う新しい繋がり

――「こういう人にどんどん活用してほしい」というターゲット像はありますか?

伊藤:漠然と「このままでいいのかな」という不安を抱いている方に活用していただきたいです。特に世代や性別でターゲットを絞っているわけではありません。現在、入居者は20代の方が多いですが、40代・50代の方も複数名いらっしゃいます。当初は40代・50代の方が入居されると想定していなかったのですが、長年のキャリアを経て「ここの設備を使いながら何か新しいことを実験してみたい」という方がいらっしゃったのは、私たちにとっても嬉しい驚きでした。

佐藤:最近では60代の方の入居も決まりました。仕事は一段落されて、ご家族とは別の利害関係のない若い世代と交流できる機会を求めて単身で入居されるそうです。このように多様な人々がそれぞれの「やりたいこと」を持ち寄り、互いに応援し合える。コクヨが目指す「自律協働社会」という未来を体現するようなコミュニティが、「THE CAMPUS FLATS TOGOSHI」で生まれつつあると感じています。

――「THE CAMPUS FLATS TOGOSHI」は、生活者のウェルビーイングをどのように向上させるとお考えですか?

伊藤:従来のシェアハウスというと、どうしても人との距離感がすごく近いというイメージを私自身も持っていましたが、「THE CAMPUS FLATS TOGOSHI」では「心地の良い距離感」で暮らせることを大切にしています。
プライバシーは確保しつつ、昔ながらのご近所付き合いのような、緩やかだけれども温かい交流が生まれる仕組みを取り入れています。その交流の中で、自分自身を見つめ直したり、新しい何かを発見したりできる。そういった点がウェルビーイングの向上に繋がるのではないかと考えています。

佐藤:「自律協働社会」の実現に貢献できる場所だと感じています。様々な人と一緒に前向きに生きることができる。そして、自分のやりたいことを、隣に住んでいる人たちや町の人たちも含めて応援し合える。そういうコミュニティを育んでいけること自体が、とてもウェルビーイングなことだと思います。

――最後に「THE CAMPUS FLATS TOGOSHI」の今後の展望を教えていただけますでしょうか。

伊藤:コリビングという一緒に暮らすことを通じて新しい価値が生まれる場は今後ますます重要になってくると考えています。将来的には他のエリアでの展開も視野に入れています。「THE CAMPUS FLATS」 というブランドとして人々の「暮らす」、そして「働く」のちょうど真ん中あたりを支援するようなサービスとして、発展させていきたいです。
THE CAMPUS FLATS TOGOSHI

まとめ

東京で何か新しいことに挑戦してみたい——そんな想いをカタチにできる「THE CAMPUS FLATS TOGOSHI」。暮らしながらプロトタイプできる住まいなんてワクワクしますよね。もし気になったら、ぜひ一度足を運んでみてください!

THE CAMPUS FLATS 公式サイト: https://flats.the-campus.net/
写真 良知慎也