寒さで風邪をひきやすくなったり、体の緊張が取れず疲れやすくなる冬。病や不調に負けない健やかな暮らしを実現するために、食生活に薬膳の知識を取り入れてみてはいかがでしょうか?
昨年5月のウェルチルフェスタにも登壇いただいた薬膳料理のスペシャリスト・赤堀真澄さんに、薬膳の基本的な考え方や、この冬取り入れたい薬膳習慣のコツを教えていただきました。「薬膳ってなんだか難しそう……」そう感じている方も、今日から実践できる薬膳料理のアイデアを知ることで、きっと身近に感じられるはずです。
プロフィール
赤堀 真澄
幼い頃からの不調を薬膳で改善したことで、薬膳を自らの道に選ぶ。香港で学んだ本場の中医学を基に、実践しやすい食のセルフケアで体質改善のサポートを届ける。一般社団法人日本食医食美研究会の代表理事や国際薬膳学院の学院長、和学薬膳®協会の理事長も務め、大学などでも指導。2022年からは梅花女子大学でも教鞭を取り、若い世代に向けた薬膳知識の普及にも尽力する。国際中医師、和学薬膳®博士、唎酒師と、数々の資格も保持。
まずは押さえておきたい、薬膳の基礎知識
薬膳の起源は、今から3000年以上前の古代中国にあります。皇帝に提供する食事を通じて、長寿や病気予防、健康維持をどのように実現するかという予防医学の考え方が、とても重要だと考えられていました。その考え方が現代の「薬膳」へと受け継がれ、中華圏では今でも食を通して体の不調を整えるという考え方が生活に根付いています。
押さえておきたいポイントは2つ。まずは、「陰陽」です。昼の温かさや明るさを連想させる「陽」と、夜の冷たさや暗さを連想させる「陰」の2つに物事を分類し、そのバランスを保とうとするのが、薬膳の考え方です。
身近なところでは、春夏の暖かい季節は「陽」、秋冬の寒い季節は「陰」に分類されます。「陽」の季節には体に溜まった悪い要素を排出する食材を、「陰」の季節には体に不足している要素を補う食材を摂るといいとされています。
人それぞれ、体質の違いがあります。暑がりの方は排出を助ける食材を、寒がりの方は補う力のある食材を摂ると、体が整います。
続いて、「五行」の考え方。「陰陽」を細分化し、人間の体を含む自然界すべてのものを5つに分類します。さらに食材は「五性」「五味」「五色」に分類され、季節や体調、生活環境などと照らし合わせて考えると、その時々に必要な食材を簡単に選ぶことができるんです。
この冬取り入れたい、体の内側から温め、巡らせる食材たち
「五臓」という言葉があるように、人の体の内側も「肝(かん)・心(しん)・脾(ひ)・肺(はい)・腎(じん)」の5つを重要な部分として考えます。特に寒い冬の季節に労わりたいのは、「腎」の部分。腎の働きを高めることで、体全体が温まります。
体の内側を温めるには、「黒くて塩辛い味(鹹味・かんみ)がする海のもの」を積極的に取り入れるのがおすすめです。おせち料理によく使われる、えび、昆布、黒豆なども当てはまります。手軽な鍋料理にタラの白身を入れてみたり、お味噌汁を鮭のあら汁にしてみたり。いつも飲んでいるお茶を、冬の期間だけでも温かい黒豆茶に変えてみると、体がポカポカ温まります。
お酒が好きな方は、芋焼酎を黒豆茶で割って飲んでみてください。まろやかな味わいがクセになりますし、黒豆はアルコールの排出を助け、体内の湿気を取り、動きにくくなった膝や腰の動きをよくしてくれるので、この季節にぴったりなお酒の楽しみ方です。
知らずに取り入れている?身近な薬膳食材と、活用のコツ
薬膳と聞いて「実生活に取り入れるのはハードルが高い」と感じる方も多いのではないかと思います。でもすでに多くの方が、知らず知らずのうちに、おうちにある食材を使った薬膳料理を取り入れているんです。
この季節、普段の料理に生姜をプラスする方も多いのではないでしょうか。生姜は、身近な薬膳食材のひとつ。体を温めて発汗を促す力があるので、冷えによる不調に強い体を作る手助けをしてくれる食材です。
生姜の力を上手に活用するために、ぜひ知っておいていただきたいのが、「皮の扱い方」。野菜の皮には、体内に溜まったものを排出させるパワーがあります。自分の体調に合わせて、皮を残すか取り除くかを判断すると、より細かなメンテナンスができるようになります。
皮を剥いた生姜を日光の下で干しておけば、太陽の「陽」の力が加わって体を温める力がグッと増します。一方で、体を温めながら手足のむくみを取りたいという方は、ぜひ生姜の皮を剥かずに料理に使ってみてくださいね。生姜の皮が持つ排出の力が、体をスッキリさせてくれるはずです。
難しいと思っていた薬膳も、「これならできそう!」というコツが盛りだくさんでした。薬膳の知識を生活に取り入れるだけで、寒い冬も体を守りながら、心地よく過ごせそうですね。薬膳で今年の冬をより快適で健やかに過ごしてみませんか?
国際薬膳学院の学院長として、たくさんの方に薬膳を指導されている赤堀さん。
現在は、「学院での対面」と「自宅から参加できるオンライン」が選べる、ハイブリッド形式で授業を行っているそうです。「もっと薬膳について学びたい!」という方は、国際薬膳学院のホームページをチェックしてみては?
取材・執筆/神田佳恵