年々、厳しさが増す夏。「休んだはずなのに疲れが取れない・・・」と夏バテに悩んだ経験はありませんか? 夏の疲労回復には体を動かす「アクティブレスト」が有効なのだとか。スポーツトレーナーの坂詰真二さんに、暑さを乗り切る体づくりについて聞きました。
坂詰真二(さかづめしんじ)
1966年、新潟県生まれ。スポーツ&サイエンス代表。NSCA認定ストレングス&コンディショニング・スペシャリスト、同協会認定パーソナルトレーナー。横浜市立大学卒業。大手スポーツクラブを経て独立。アスリート指導、指導者育成、メディアを通じた運動指導に加え、スポーツ・医療系専門学校の講師も務める。新刊「シニアのための筋トレ解剖図鑑」等、多数の著書がある。
夏特有の疲労。いちばんの原因は「栄養不足」
夏の暑さで食欲が落ちることがありますが、これは「できるだけ体温を上げたくない」という体の働きが関係しています。食事をすると、食べたものを消化・吸収・代謝する過程でエネルギーの一部が熱に変わって、体温が上がります。とくに、熱に変わりやすいタンパク質を多く含む肉類などは、喉を通りにくく感じますよね。つい、そうめんのような軽い麺類ばかりになり、栄養バランスが崩れてしまいます。
また、暑さで水分摂取が増えることで胃腸が疲労したり、胃が満たされたりして食事量が減ることもあります。その結果、エネルギーも不足し、栄養バランスも崩れてしまうことに。
このように、夏に疲労がたまりやすい大きな原因の一つは、「栄養不足になること」なのです。
加えて、日が長い夏は体内時計が乱れやすくなり、暑さによる寝不足も重なって 睡眠の質も低下しがちです。栄養不足や睡眠の質の低下に加え、暑い時期が長引くことで、体力低下が起こってしまうことが、夏疲労の特徴といえるでしょう。
自律神経のバランスが乱れることも疲労の原因
さらに疲労には自律神経の問題もかかわります。人の体は本来、日中に体を動かす活動をして交感神経が優位になり、夕方から副交感神経が優位になって休息や睡眠へ向かうリズムがあります。
ところが現代の生活では、朝食を抜いたり、デスクワークが多かったりなど、日中も交感神経が十分に活性化されない状態が続きがちです。体を動かすのがおっくうになる夏はなおさらです。さらに夕方以降もスマートフォンで動画を見るなどの刺激によって交感神経が優位になった状態が続くと、自律神経のバランスが乱れ、睡眠の質も下がります。そのような生活が続くことで、疲れが解消されないまま蓄積してしまうのです。
横になって休んでも疲れが抜けない理由
疲労には、「動的疲労」と「静的疲労」があります。動的疲労は、運動や力仕事などによってエネルギーを消耗して引き起こる疲労です。動的疲労には横になるなどして、エネルギーを使わずに副交感神経を働かせる「消極的休養(パッシブレスト)」が必要です。
一方、「静的疲労」は、同じ姿勢を長時間続けることで起こる疲労のこと。たとえば1日中座ってパソコン作業をすることなどで、首や腰まわりの血流が滞って起こる疲れです。この「静的疲労」を解消するには、軽い運動などで全身の血行を促進する「積極的休養」、つまりアクティブレストが必要になります。
近年の日本の夏は体を動かすことが難しい季節ですが、エアコンの効いた室内でスクワットや体操をしたり、気温の下がる夕方にウォーキングするなどして、日中に一度交感神経を働かせておくことが、静的疲労の回復を促すとともに、夜間の睡眠の質を上げて、さらなる疲労回復を促進することにつながります。
「アクティブレスト」が静的疲労に効くメカニズム
血液は心臓から全身に送り出され、筋肉の収縮と弛緩によって心臓へ押し戻されます。
これを、「ミルキングアクション」と言いますが、長時間座ったままの姿勢が続くと、この機能が不足し、血流が滞ってしまいます。その結果、血管から体液が漏れ出して、細胞間質液が増え、むくみが生じます。それが神経や血管が圧迫し、さらにだるさが生むという悪循環につながります。
疲れていると「休む=止まる」と思いがちですが、「静的疲労」を解消するには、体を動かして血流を良くすることが必要です。適度に運動をすることで、ドーパミンやセロトニンが分泌され、疲労感の軽減にもつながります。
「アクティブレスト」はいつから取り入れられた?
プロスポーツの世界でも、かつては「試合の後は完全に休む」という考え方が主流でした。しかし、ロサンゼルスオリンピック後の1980年代後半ぐらいから、日本には、フィットネスブームとともに「積極的休養」の概念が入ってきます。プロ野球では、ピッチャーが登板翌日に軽くジョギングするなどの習慣は、この頃から広まり、以降、プロスポーツの世界では、試合日、積極的休養日、完全休養日を組み合わせた方が疲労が抜けやすいという考え方が普及しました。
ただ、こういった理屈とは別に、昔から会社や学校では昼休みにキャッチボールやバレーボールをするような過ごし方がありましたよね。一般の方の中でも、感覚的に体を動かすことでスッキリする、という疲労回復の方法は実践されてきたのだと思います。
Vol.2では、フィットネス施設で実践できるアクティブレストのポイントを
お伺いします。お楽しみに!
取材・執筆/早川奈緒子 編集/EGGO
まとめ
・夏疲労を防ぐには、栄養・睡眠・運動のバランスを整えることが大切。
・軽く体を動かす「アクティブレスト」は、血流を促し、静的疲労の回復をサポートする。
・無理のない範囲でアクティブレストを取り入れ、夏を元気に過ごそう。