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夫婦も子育ても脳でうまくいく!黒川伊保子さんインタビュー(vol.2)

vol.1では、「ことば」や「第一声の扱い方」が、家族やパートナーとの関係を大きく変えるという視点についてお話を伺いました。vol.2は、夫婦間や子育てでの接し方や、自分をリセットするための工夫について伺います。

理想の夫婦像は十人十色

――黒川さんは理想的な妻像のように感じます。我が家では母が父を褒めることがよくあるのですが,
正解なのでしょうか?


黒川:とても素敵なご夫婦ですね。もちろん大正解ですが、普通はなかなかできません。私なんて逆に夫をこき下ろしてきたから反省していますよ(笑)。褒めるにも「お相手が聞く耳を持っているか」、「性格が合うか」も大きいですし、夫婦の形は本当にそれぞれです。
私の父は母にとても優しく、母はのびやかで強かった。晩年、父は、毎朝膝の悪い母のために蒸しタオルを作ってベッドまで届けていました。余命3か月と言われても、まだ。ある日、タオルを届けた父に、母が『なんでいつまでも、そこにいるの、早く行けば?』と言う声が聞こえました。父は『飴玉をなめ終わるまでそばにいていいだろう?』と返し、母が『じゃあ、ちゃっちゃと噛んじゃって』と言う(笑)。
今思えば、父はそれでよかったんです。二人のプレイというか、母のじゃじゃ馬ぶりを愛していた。そんな掛け合いが2人らしかったんですね。理想の夫婦は100組いれば100通りあります。
父の死後、母が『私、お父さんに厳しかった気がする』と言うので、『気のせいじゃないわよ』と返しました(笑)。でも『謝りたい』というので、『四十九日まではそばにいるって言うから、今のうちに言っとけば間に合うよ』と伝えたら、後日『15分でいいから出てきてって言っているのに出てこない』と怒っていて、私が『なんで15分なの』って聞いたら、『それ以上いたらウザイでしょ』って。落語のオチみたいでした。
夫婦には決まった形はありません。どれだけぶつかっても「この人しかいない」と思える関係もあります。

思春期の子どもにはまず同情を

―― 思春期の子どもへの悩みも多いですが、アドバイスはありますか?

黒川:脳は12歳までが「子ども脳型」、15歳から「大人脳型」。13〜15歳の3年間は両方が混在し、脳の整合性が悪いんです。だから遅刻が増えたり、片付けられなかったり、言うつもりのない口答えが飛び出たりする。自分の脳を制御できず苦しい時期なんですね。18歳くらいまで続くので、大人は「同情」が基本です。
『くそばばあ』と言われても、「大好きなお母さんにそんな言葉を言うなんて、誤作動しちゃってかわいそうに」くらいでいい。正面から受け止めて戦わないことです。
自己肯定感が落ちているので、叱るより認める回数を増やす。『結果は失敗したけど、ここはできているよ』とか。思春期は脳が目論見通りに動かないことで不安が最大になる。人生で同じことが起きるのは死の直前ですが、どちらも脳が信頼できない状態です。だからこそ、できている部分を伝え、支えることが親の役目です。

落ち込んだ時は脳を切り替える

―― うまくいかず落ち込む時はどうすればいいですか?

黒川:落ち込みの対象から脳を離すこと。遊びに行くのもいいですし、夢中になれるものを持つのもいいです。涙でストレスが減るので、ドラマを見て泣くのもいい。これはイライラの解消にも効きます。私は忙しくてイライラしたとき、それを子供にぶつけないために、先に何か泣くことにしていました。「100万回生きたねこ 」は、必ず泣ける私のテッパンです。「泣く」「笑う」「体を動かす」このどれかですね。私はダンスが一番効きます。
働くお母さんは、家に帰って子どもの世話をしているうちに仕事のストレスを忘れ、翌朝は子育てのイライラを仕事で忘れる。専業主婦がしんどいのは、家が職場なので一日中同じテーマに向き合うことになるから、脳が切り替わらないんです。
場面が変わると脳内で使われる回路が一気に変わるので、意識して切り替える必要があります。会社から帰ったら服を全部着替えるなど、自分を変える儀式は有効ですよ。

―― 専業主婦の方はどうすればいいですか?

黒川:家から離れること。『家で休んで』と言われても、家が職場なんだから休めるわけがない。私はミステリー小説を1冊持ってホテルに泊まる日をつくります。専業主婦の方も、そういう自分だけのリセット日を持っていいんですよ。
次号は職場や家庭で役立つコミュニケーションなどについて伺います。
お楽しみに!