命を懸けて何かに熱中している人は、幸せで充実した日々を送っているといえます。そんな熱中ピープルに、人生を楽しむ秘訣をインタビューするこのコーナー。第3回目は明治10年創業の老舗ワイナリー「株式会社シャトー勝沼」専務取締役営業本部長 今村英香さん。ワイン作りや原料のブドウ作りに対しての「熱中!」、そして今村さんがワイン作りに携わるようになった経緯についてお話をうかがいました。
創業は明治時代!勝沼のワイナリー
シャトー勝沼の創業は1877年(明治10年)。150年近く続く勝沼のワイナリーとして、本場フランス仕込みのワインを日本に広めてきました。最近では、ワインの醸造技術で仕上げられたレモンやイチゴなどのワインなども展開。初心者から上級者まで誰もがおいしく飲めるワインを作り続けています。
始まりは自分たちが育てたブドウ
シャトー勝沼では創業当時からワインの原料であるブドウを自社で栽培しています。そのこだわりについて、今村さんにうかがいました。
——ワインの原料となるぶどうを自社で育てているそうですが、何かきっかけがあったのでしょうか?
今村:
もともと、私たち創業者一族がブドウ農家出身でした。自分たちで栽培し、収穫した良いブドウで良いワインを作るという、当たり前のことを創業当時からやっていたというだけです。
当時から「ワインは商売道具」という考え方もあったので、ブドウを作る農家、ワインを作る人、販売する人、というように分業で行われるところも多かったようですが、私たちは創業から一貫して、ブドウ作りからワイン醸造を行っています。
今では規模も大きくなったので、農家さんからブドウを買い取ることもありますが、「ブドウがいちばん大事」というのは、家訓のように受け継がれています。
——原料となるブドウ作りで重要なところを教えてください
今村:
土作りが最も重要です。土がブドウ作りの根底です。同じ畑でもエリアが少しでも変わると土の質が変わってきます。そして、土の質が変わるとブドウの質も変わります。ブドウを食べただけで「ここは甘みが強くて、その上に酸味が乗っているな」とか、「酸味の方が強くて、すごくミネラルっぽい感じだな」とか分かりますよ。
私たちがブドウを作っている勝沼町勝沼、そして菱山というエリアの土壌には粘土質でミネラル分も豊富に含まれています。また、小石が混ざっているという特徴もあります。ブドウ畑は山肌にあり斜面になっていますので、雨が降っても下に流れるんです。水はけがよく、翌日にはサラサラしています。
さらに私たちの畑は、朝から夕方まで日当たりがとても良く、ブドウ作りに適した日照量が確保できます。
良い土を使うと自然に良いブドウができます。そして、それが結果としてワイン作りへのこだわりにつながると考えています。
——ブドウの木を育てるのも難しそうですね
今村:
ブドウの木を育てる時に大切なのが剪定です。冬に、長く伸びた枝を短くして整えるんですが、そこが1年のスタートと考えています。剪定の良し悪しですべてが決まるというぐらいです。
剪定については、私も父に5年ほどみっちりとつきっきりで教え込まれました。「何も考えずちょこちょこ切るのはただの枝切りだ!2本枝があったらどっちを残すかを理屈で考えなさい」みたいな感じで。
——今でもブドウ畑に入って作業されているのでしょうか?
今村:
畑作業は、時間がある時は、圃場に私も一緒に出てやっています。剪定もやっていますね。忙しくしている時は出られないんですが、一年間通して畑の作業を他のスタッフと一緒に行っています。
ただ、ブドウ作りまでを一緒に行ったら、その後の作業は醸造チームの方にお任せしています。打ち合わせはもちろん行って「収穫したブドウに下手に手を加えないこと」など私の気持ちは汲んでもらっていますね。
畑ごとに仕込むという手間はかかりますが、良いブドウを渡せば、良いワインができるはず、と考えているので、そこはお任せしています。
普通の学生からワイン作りの道へ
ワインの原料であるブドウ作りについて、お父様から仕込まれたという今村さん。ワイン作りに携わるようになった経緯も尋ねました。
——今村さんがワイン作りの道に入った経緯を教えてください
今村:
普通の学生で普通に大学に行って卒業して、という経歴です。初めからワイン作りをしていた、というわけではありません。大学を卒業した後にワインの勉強を始めました。フランスのブルゴーニュの学校や、山梨大学のワイン科学研究センター(現「ワイン科学特別コース」)の社会人対象のコースで知識を習得しました。
フランスを中心に海外にも何度か行きまして、生産者の方とお話しさせてもらって、学んだことも多くあります。ただ、父から学んだことがいちばん大きいですね。
今村さん、そしてシャトー勝沼のワインやブドウに対するこだわりについて詳しくお聞きしました。次回は、今村さんが「熱中!」する仕事、シャトー勝沼の今後について掘り下げてご紹介します。
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