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【熱中!ウェルチル】第2回:ハチミツに熱中! ハニーハンター市川拓三郎さん〈後編〉

命を懸けて何かに熱中している人は、幸せで充実した日々を送っているといえます。そんな熱中ピープルに、人生を楽しむ秘訣をインタビューするこのコーナー。第2回目は“ハチミツに新たな価値を生み出す”「ミールミィ」のハニーハンター、市川拓三郎さん(40)。日本中・世界中を飛び回り、まだ見ぬハチミツを追い求める彼は、なぜハチミツに「熱中!」したのか。お話をうかがいました。

ハニーハンター市川拓三郎さんの仕事とは

金市商店の三代目・市川拓三郎さんは「ハニーハンター」としてハチミツの仕入れや製造を行っています。ハニーハンターとはいったいどのような仕事なのでしょうか? 詳しく伺いました。
——改めて、市川さんのこれまでのご経歴を教えてください。

市川:関西大学を卒業後、輸入食品を扱う会社に入社し、百貨店での店頭販売や営業を担当していました。小さい頃から家業を継ぐとなんとなく思っていましたが、外の会社がどんなものなのか見ておくようにと勧められて、大学卒業後は別の会社で経験を積むことにしたんです。
僕自身も食べ物が好きで、海外の食品を扱う仕事にとても興味がありました。輸入食品の会社では、ワインやコーヒー、紅茶、スイーツなど様々な食品に触れる機会があり、現在の仕事にも通じる部分が多いと感じています。
約3年間働いた後、家業を継ぐために戻ってきました。
——現在のお仕事内容を教えてください。

市川:会社に戻ってきてからずっと、仕入れと製造は私が担当しています。仕入れは養蜂家さんを訪ねてハチミツを買ってくる仕事で、製造は仕入れてからどういう配合で製品にするかを決める大切な業務です。会社の根幹になる部分なので、代表取締役になった現在も私が担当しています。
ハチミツは毎年味が変わるので、できるだけ平均化するために配合を考えたり、在庫管理をしたりもしています。

また海外にも足を運び、蜂蜜農家とコミュニケーションを取っています。これまでにニュージーランド、台湾、アメリカ、カナダ、ポーランド、ハンガリー、フランス、ロシア、韓国、スペイン、ブルガリアなど、世界中の養蜂家を訪ね歩いてきました。コロナの影響でここ数年は控えていましたが、今年はまたアメリカに行きたいですね。
——養蜂業者の方と現地でどのような会話・交渉をされるのですか?

市川:現地に行く前には必ず、その土地の天候や養蜂家さんのSNSをチェックしています。
野菜と同じで、花にも豊作、不作の年があるんですよ。花がよく咲いた年は、ハチミツの味も品質も抜群に良くなるので、天候の情報収集は欠かさないようにしています。

現地では養蜂家さんと仲良くなって、いっしょにご飯を食べに行ったり、お酒やバーベキューを楽しんだり、家族ぐるみのお付き合いをして、信頼関係を築くようにしています。

——電話やメールで済ますのではなく、直接現地まで行かれるのはナゼですか?

市川:自分の肌感覚が一番信用できるからです。どんなに事前に情報を集めても、実際にその土地に行って花を見て、養蜂家さんと話すことでしか分からないことがたくさんあります。ハチミツは自然のものなので、気候や環境によってその年の味や香りが大きく変わります。その変化を実際に現地で感じることが、良いハチミツを選ぶ上でとても大切なんです。

——お仕事として、「ハニーハンター」を選ばれた理由を教えてください。

市川:もともと私は「ハチミツの仕入れ担当」として、ハチミツを買い付けることが仕事でした。でも、ある時から「これからはただのインプットではなく、アウトプットも大事なんじゃないか」と考えるようになったんです。つまり、私が現場で感じたこと、得た知識や経験をお客様に伝えることこそが、本当の仕事だと思うようになりました。

ハチミツは自然の恵みであり、毎年違う表情を見せてくれます。私はその違いをお客様に伝え、ハチミツの奥深さや魅力を知っていただきたいと考えています。単に美味しいハチミツを提供するだけでなく、その背景にある自然や養蜂家さんの思いを伝えることが、ハニーハンターとしてのやりがいですね。

——市川さんが熱中しうるにふさわしいと感じた、ハチミツの魅力を教えてください。

市川:ハチミツは世界中の人が知っているとても身近な食べ物ですけど、多くの人はその奥深さを知らないんですよね。ハチミツを知るとその奥深さに驚いて、ファンになる人も珍しくありません。
世界にはまだ誰も知らないハチミツがたくさんあるはずで、それを探し出してみたい。そこがハチミツの熱中しうるにふさわしい部分で、新しいハチミツをファンの方に提供したいです。

——逆に大変なところもあるのでしょうか?

市川:一番大変なのは、やはり自然を相手にしているという点ですね。春から夏にかけてハチミツのシーズンなので、私のスケジュールは完全にハチミツ中心になります。GWなどの連休も、家族と過ごす時間はほとんど取れません。休みは雨の日くらいしかないんです。家族にはその点で苦労をかけていますね。

また、どんなに努力しても自然のものなので、良い年もあれば悪い年もあるのがこの仕事のつらいところです。無力さを感じることもありますが、それも自然と共に生きる仕事の一部だと受け入れています。

——ご自身で「プロになったな」と感じたのはいつですか。

市川:養蜂家さんからハチミツのことを尋ねられるようになったときに「自分もハチミツのプロになったんだな」と感じました。
養蜂家さんはミツバチのプロですが、ハチミツの味や品質に関しては、私たちの方が詳しい部分もあります。牛を育てることに詳しい「牛のプロ」と、牛乳に詳しい「牛乳のプロ」が別物であるように、ミツバチの管理や養蜂の技術に関しては彼らが専門家です。しかしハチミツの味わいや品質を評価することに関しては、私の方が専門家として頼られるようになりました。

ハチミツを通じて、世間の人々に伝えたい想い

市川:やはり自然の大切さや環境問題への意識です。今、地球温暖化や気候変動が話題になっていますが、その影響はハチミツの生産にも直結しています。将来的には、もしかしたら今のようなハチミツが食べられなくなるかもしれない、という危機感があります。

私は子どもたちを対象に「ハチミツしぼり体験」などの活動も行っていますが、そこで「このままだと、ハチミツが食べられなくなっちゃうんだよ」と話すと、子どもたちはすごく真剣に耳を傾けてくれます。「じゃあ、頑張って守らないと!」と、環境問題に関心を持ってくれるんです。そうした活動を通じて、ハチミツに興味を持ってもらうことが、結果的に環境問題への意識につながればいいなと考えています。

これからの挑戦

市川:今年から新たな挑戦として、ハチミツ酒「ミード」の醸造所を京都に作りました。これまではミードを輸入したり、委託で製造して販売したりしていたんですが、自分たちで製造免許を取り、京都に醸造所を作ったんです。これまで取り扱ってきた100種類以上のハチミツをお酒にして、新しいお客様にアプローチしたいと考えています。
ミードはまだ日本ではあまり知られていないので、セミナーやイベントをして認知活動を通じて、ハチミツの新たな楽しみ方を提案していきたいと思っています。

まとめ

ハチミツに魅了され、その無限の可能性を追い求めるハニーハンター市川拓三郎さん。市川さんのハチミツへの熱中は、これからも新しいハチミツの楽しみ方をわたしたちに届けてくれそうです。ミードを使った新しい挑戦も、これからとても楽しみにしています!