50代以降は子育てという大きなプロジェクトを終え、人生の第2幕「セカンドライフ」が始まる時期。これからの人生を自分たちらしく楽しむために、住まいを「セカンドライフ仕様」にリサイズしませんか? Vol.5では「片付けパパ」として活動する大村信夫さんに、50代から始める大人のための空間リメイク術について伺います。
長年積み重なった膨大なモノが片付けの課題
―― 50~60代の子育てを終えた世代は、部屋の片付けにどのような課題がありますか?
大村:
この世代の課題は「長年積み重なった膨大なモノ」と、「これからどう暮らしたいかのイメージを描き切れていないこと」にあります。
1つ目が「長年積み重なった膨大なモノ」と「実家のモノ」のダブルパンチです。長く住み続けている家には、日々の生活用品や子どもの成長記録、親の家から引き取った荷物など、たくさんのモノがあります。多くが大切で愛着のあるモノであるため、どこから手をつけていいか分からなくなりがちです。
2つ目が「もったいない」という美徳によるブレーキです。高度経済成長期を過ごした世代にとって、モノを捨てることは罪悪感を抱きやすい行為。「まだ使える」「いつか誰かが使うかも」という思いも強く、モノの出口が完全に塞がってしまいます。
最後が、住まいの「ダウンサイジング」ができていないことです。家族4、5人で暮らしていた頃の大型の家具、食器、家電が、夫婦2人暮らしになってもそのまま残っているケースが多い。生活のサイズと空間のサイズがズレているため、掃除や管理が負担になっています。
大村:
今後の片付けは「捨てる」ためではなく、「これからの人生を身軽に楽しむ」ために行うのがおすすめです。
最初に「思い出」と「実用品」を切り分けます。 全部を一度に片付けようとせず、まずは「今使っているモノ」だけに集中しましょう。写真や賞状などの思い出の品は、いったん一か所にまとめて後回し。キッチンや洗面所などで、使っていないモノを徹底的に取り除きます。今の自分たちを支えてくれないモノを手放すだけで、家の中の空気が動き始めます。
次に「10年後の自分」を想像して動線を整えましょう。 これからは体力の変化も考慮した整理が必要です。そこで重いモノ、使いにくい高い場所にあるモノを、腰から肩までのゴールデンゾーンに移動させてください。また、床にモノを置かない習慣も徹底しましょう。これは単なる片付けではなく、将来の転倒防止というリスクマネジメントでもあるのです。
そして、モノを今のライフスタイルに合わせた量まで減らすとともに「とっておきの良いモノ」を使うようにしましょう。食器であれば来客用を思い切って手放し、毎日使うモノを「とっておきの良いモノ」にします。特別な日ではなく、「日常を豊かにすることに全力を注ぐ」のが、この世代の整理の極意です。
子ども部屋を、自分たちの趣味や夢の拠点にしよう
―― 子どもが独立したあと、その部屋が物置になってしまうケースが多いと聞きます。自分たちが楽しむための空間へ更新するにはどうしたらいいでしょうか?
大村:
子ども部屋を「物置」から「趣味や夢の拠点」に変えることは、セカンドライフの幸福度を上げることに繋がります。そのためのアクションは3つです。
その1が、「子ども部屋」という役割を終わらせる宣言。独立したお子さんに『この部屋をこれからパパとママの趣味の部屋として使いたいんだけど、残っているモノはどうする?』と相談しましょう。お子さんにとっても、実家が過去の倉庫であるより、親が今を謳歌している場所であるほうが嬉しいはずです。
その2が、空間に「新しい名前」をつけることです。「子ども部屋」と呼び続ける限り、そこは物置のまま。ですから、その部屋を「アトリエ」「書斎」「シアタールーム」など、具体的にどう使いたいか名前を決めてください。私が『副業の超基本』(朝日新聞出版)で書いたように、50代からの学び直しや副業の拠点にするのも良いと思います。名前をつけることで、脳はその目的に合った空間にしようと動き出します。
その3が「床面積」を大きくすることです。 物置化を防ぐ最大の物理的防御は、床を見せること。まずは部屋にある「とりあえず置いた箱」をすべて出し、床を掃除して、ワックスをかけたりお気に入りのラグを敷いたりしましょう。床が見えるようになると、そこに新しい「やりたいこと」が入り込む余地が生まれます。
ぜひ余計な重荷を下ろし、ご夫婦で軽やかに新しい景色を手に入れてください。
取材を終えて
インタビューを通して、片付けは単なるモノの整理ではなく「自分の人生をデザインすること」なのだと実感しました。大村さんのお話は、どの年代の方でも今日から始められる実践的なヒントばかり。「未来の自分軸で選ぶ」「一本のペンを整えることから」といった言葉には、完璧を目指さなくていいという優しさを感じました。新生活が始まる春だからこそ、まずは引き出し一段から。心と暮らしに余白を作って、前向きな毎日をスタートしてみませんか?